氷のように冷たい雨粒が空から落ちてくるなか、東京都内にある斎場に現れたのは草刈正雄(62)だった。彼に続いて悦子夫人(57)と、母を支えるようにして歩く二女で女優の草刈麻有(21)、そして長女でダンサーの紅蘭(25)の姿も。2月18日、草刈正雄の長男・Aさん(享年23)の密葬に出席したのは、家族・親族・友人ら30名ほどだった。遺影のAさんはグレイのニット帽をかぶり、真赤なジャンパーを着て微笑んでいたーー。
父・草刈が悲報を聞いて現場に駆けつけてきたのは、14日の転落事故から約2時間後の夜22時ごろだった。
「なんで死んだんだぁ!」
あたりをつんざく絶叫に驚いたマンションの住人が目撃したのは、血だまりのそばでひれ伏す草刈正雄の姿だったという。実は草刈と長男の父子関係は微妙なものだったようだ。最近も長男は東京都内にある草刈の自宅では生活していなかったという。
「2人のお嬢さんたちにはよくお会いしますが、息子さんをお見かけしたことはほとんどありませんでした」(自宅近所の住人)
草刈は、インタビューで子供たちとの関係について次のように語っている。
《長女と長男が小さかった頃は、僕はいい父親じゃなかった。仕事の悩みがまだ続いていたのでイライラして、感情的になって叱ることがよくありました》(『週刊文春』2011年6月9日号)
Aさんが誕生したのは、草刈が39歳のとき。デビュー以降2枚目俳優として活躍してきたが、“年齢の壁”にぶつかり気持ちが荒んでいた時期だったのだ。自分はいい父親じゃなかった……、その思いは、草刈の心の奥底にトゲのようにひっかかっていたようだ。ほかのインタビューでも「僕はお手本となる父親がいなかったから、(子供たちに)どう接していいかわからないんですよね」と語っていた。
「Aさんとの微妙な関係を修復できないまま、彼を失ってしまったことは、草刈さんにとって痛恨だったでしょう」(草刈家の知人)
Aさんの転落直後、血だまりの事故現場で、地面に手をついて泣き叫んでいたという草刈。土下座とも見て取れるその慟哭の姿には、辛くあたってしまった息子への謝罪、父子関係への悔恨など、言葉にならない思いがつまっていた。