「僕、原作が本当に好きだったんですよ。初めて『振り子』の動画を見たときは、鉄拳さんの作品だって知らなかったんですけど、“すっげーな、コレ”って、見るたびにえらく感動して。実写化で主演をお願いします、と言われたのが、ちょうど感動している矢先だったので、非常にうれしかったですね」
そう語るのは、芸人・鉄拳のパラパラ漫画が原作の映画『振り子』(2月28日より全国順次公開)で大介役を熱演している、中村獅童(42)。
「いい話でね。心に突き刺さるものがある。完成した映画を見ながら、鉄拳さんがいちばん泣いてたかな。僕も自分の作品で泣くとは思わなかった(笑)。僕が演じる大介は、何事にも一生懸命だけど、ときどきそれが違う方向にいってしまう、生き方が不器用だけど人間味あふれる男なんです」
映画の舞台は昭和だ。
「世界観もそうだけど、“アナログな心”っていうのが象徴的で。何でもデジタル化していくなかで、人の心の温かさに飢えている現代だからこそ、この作品は心にグッとくるんじゃないかと思いますね」
撮影中にはこんな出来事も。
「銭湯の前で車いすを押しながら『雨が降ってきたから帰ろうか』っていう場面があるんですけど、本当に雨が降ってきちゃって。撮影用じゃないんですよ。脚本なのかなって思うくらい……映画の神様がついていたんだろうな」
原作では、左右に揺れる振り子の中に夫婦の半生が描かれていた。
「うれしいことや悲しいことを乗り越えていくのが人生だろうし、喜びであれ悲しみであれ、分かち合えるのが家族だったり妻だったりするのかなって。お互いのね、ほっとできる瞬間も。一緒に時間を過ごして一緒に年をとりながら、お互いに支え合って、尊重し合って、尊敬し合える夫婦でいたいですね」