’02年に世田谷パブリックシアターの芸術監督就任以来、「古典と現代の融合」「レパートリーの創造」を指針として掲げてきた狂言師・野村萬斎氏(49)。彼に“狂言”が身近になるエピソードを教えてもらった。
《狂言は「このあたりの者でござる」から始まる!》
「狂言でいちばんよく使う自己紹介です。いつの時代でもどこの国でも最初にこう言うんです。狂言はどこにでもいるような人を演じるので“私はあなたと同じ者だと思ってくださいね”と始まるんです。つい先日、父(人間国宝の野村万作)はパリ公演でも言っていました。観客は皆“このあたりの者”ですからね」
《江戸時代までは即興のコントだった!》
「狂言はもともと、あらすじの展開だけ決めておいて、即興的に演じていたコントのようなものだったんです。江戸時代になって、お殿様に見せることになり、『じゃあきちんと決めておかなきゃ』と台本を作った。その台本に沿って何度も演じていったので、古典化が始まり、現代まで続いているんですね」
《狂言は中国の“ものまね芸”が発展したもの》
「中国の雑技。いわゆるサーカス的な見世物芸の中のものまね芸が発展したといわれているんですよ。当時は誰もが知っている有名人といってもあまりいないので、どこにでもいそうな人をまねしたんです。“このあたりの者“なので、そんなに着飾らなくてもいいという発想なんですよね」