「自分が演じているということを忘れるぐらい、松野に腹が立ちました。周りの人間に迷惑をかけてなぜ、こいつは平気なんだと。逆に僕は常識人なんだということを感じましたね(笑)」
 初主演映画『ホコリと幻想』で主人公の松野という男性を演じた戸次重幸(41)。彼は演じる際、松野の人間性にはかなり疑問を抱いていたようだ。しかし、それには納得の理由が。松野は高校卒業後、アーティストとして野望を抱き上京したのだが、結果はまったく出せなかった。なのに帰郷後、同級生には真逆のことを伝え、羨望のまなざしを浴びていたのだ。
「でも、ものすごく共感できる部分もありました。誰しも自分を、ひと回りふた回り大きく見せる見栄を張る願望というのはありますよね。虚栄心といいますか。それがないと社会が成立しないとすら思う。松野みたいなところはみんな持っていて、彼はその度合が行きすぎただけなのかなと」
 戸次本人は、北海道発の人気演劇ユニットTEAM NACSのメンバーとして地元で大きな支持を得たあとに東京へ活動の場を広げる。松野とは正反対の人生を歩み、“チケットの入手が日本1むずかしい劇団”といわれるほどとなった。その理由については――。
「そこは明確にひとつだけですね。大泉洋の存在です。メンバーの全員がそう思っているでしょう。ああいう突出した人がいてくれたおかげで、地方のいち劇団で終わっていたかもしれないところに別な展開があった」
 現在もレギュラー番組のため札幌には月1回以上帰っているそう。そのためか「ホーム感というのはない。自分の中の現在進行形のいるべき土地のひとつです」と話す戸次。
 今年は、年明けから舞台2作品をこなし、9月にはTEAM NACSの全53公演を終えたばかり。まさに全力疾走。さらに先日、結婚を発表するなど、公私ともに充実しているようだ。
「去年は映像をやらせていただいた年で、今年は舞台の年。バランスが取れて楽しいですね。どちらも、今後もやらせていただければと思います」

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