「堺さんとは以前、大河ドラマ『篤姫』(08年)で共演して、大泉さんとは今回が初めてですが、二人とも独特の雰囲気を持っている。とくに大泉さんが演じている信幸は一本気で、『バカ』が付くくらい正直な男で。今回、彼は、笑いをいっさい封印して、きまじめ一本でやっておられる。このあたりは『実に見事だな』と思いますね」
そう語ったのは現在、NHK大河ドラマ『真田丸』で真田昌幸役を演じている草刈正雄(63)。堺雅人演じる主人公・真田信繁、そして大泉洋が演じる信繁の兄・信幸。昌幸はその2人の父親として、ドラマでも大きな存在感を見せている。
「実は、31年前、32歳のときにNHKの新大型時代劇『真田太平記』で真田幸村(信繁)をやらせていただきました。そのとき父・昌幸を演じられたのが丹波哲郎さん。丹波さんは普段からとても豪快で、明るくて、まさに昌幸そのものでした。ところが僕は、どちらかというとネクラで(笑)。昌幸役のオファーをいただいたとき正直『僕にできるかな……』と思いました。丹波さんの昌幸が強く印象に残っていましたので。でも、三谷さんの脚本を読むにつれて『僕なりの昌幸を演じよう』と決めました」
31年前の丹波さんとの共演では、忘れられない思い出があるという。
「僕が『真田太平記』に出演したとき、丹波さんから刀をいただきました。草刈家の家紋が入った大小の刀と、それに、刀掛けまで。これは、いまも、わが家の家宝にしています」
今回『真田丸』で昌幸役を演じるに当たり、31年前の丹波さんの“流儀”を引き継いだ。
「あのときの印象が強烈だったし、とてもうれしかったので、僕も、堺さんと大泉さんに刀を贈りました。『真田丸』のロケが始まる少し前。昨年の8月ごろだったと記憶しています。ただし、刀に両家の家紋を入れるとなると、かなり高額になる。僕にはそれだけの予算がなかったものですから(笑)、鞘の部分に六文銭(真田家家紋)を入れた太刀を『20年後、30年後にどちらかが昌幸をやることになったら、“息子たち”に刀をプレゼントしてよ』と言って。2人とも『わかりました。やります』と言って、とても喜んでくれました」
そして『真田丸』で“父子の約束”を交わした“息子たち”について、こう今後の期待を寄せた。
「“2人の息子”はこれから成長していきますが、“父親”としては、成長の過程を、堺さんと大泉さんがどう演じるかとても楽しみにしています」