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押切もえ(36)の小説『永遠とは違う一日』(新潮社刊)が山本周五郎賞にノミネートされたのは、4月21日。『火花』(文藝春秋刊)で芥川賞を受賞した又吉直樹(35)に続き芸能人受賞なるかと期待されていたが、5月16日の受賞作発表では僅差で栄冠を逃した。

 

モデルとして活躍するかたわら、’05年からは情報番組『スタ☆メン』(フジテレビ系)でコメンテーターに挑戦。’09年にはエッセイ『モデル失格』(小学館刊)で作家デビューも果たすなど、活躍の場を広げていった押切。だが彼女は人知れず葛藤していたという。

 

「当時の私は『モデルだから』という考えがあって、変にカッコつけてしまっていました。それに『大人っぽいことを言わないと』と思って必死に新聞を読んで勉強して、誰も知らないような記事を探して発表しようとしていました。でもそれって結局、本当の私じゃないんです。それに、誰も私にそんなポジションを求めていないんですよね」

 

当然うまくいかず空回りし、自分にコンプレックスを抱くようになっていった。

 

「『とにかく変わらないと』と思って、毒舌キャラになってみたこともありました。でもキャラじゃないから場が白けちゃうんです。支えてくれていた人たちからも『がっかりです』と言われて、どんどんファンも離れていった。そのとき『自分じゃないものに憧れてそれを演じても、傷つくだけ。誰も得せず、自分の心だけが痛むんだ』と身を持って知りました。無理せず楽になってきたのは、30代になってからだと思いますね」

 

そんな人生経験も、執筆には活かされるはず。現在彼女は13歳から17歳を対象にしたミスコン『ミス・ティーン・ジャパン』の大会アンバサダーを務めているが、未来ある女の子たちに対してこう語る。

 

「『私じゃだめだ』とか考えないで、好きならシンプルに挑戦してほしい。私が思うのは『大事なのは気持ちだ』ということ。たとえばお母さんが後押ししてでもいいから、頭で考えず心で感じるままに動くようにさせてあげてほしい。自分の知らない魅力がまわりの後押しによって花開くこともあると思いますから。一歩を踏み出すことで、世界が変わることがある。今回の小説の中で『思いは伝わる』という言葉があるんですが、それこそ作品で私が訴えたかったことなんじゃないかと今は思っています」

 

現在、押切は千葉ロッテマリーンズの涌井秀章投手(29)と交際中。「ノミネートされたことは喜んでくれました」と語る彼女に、これからについて聞いてみた。

 

「20代のころの私は、すぐにでも結婚したかった。30歳までには結婚しているものだと思っていて、近づくにつれて焦ったこともあります。でも今はみんなと同じタイミングじゃなくてももいいかなって思うようになりました。子どもは欲しいし、いつかという思いはあります。でも焦らず自分の気持ちと正直に向き合っていきたいですね」

 

自然体な彼女の姿勢が、作品の世界観を作り上げているのかもしれない――。

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