桂歌丸師匠(79)が、5月15日放送をもって「笑点」大喜利の司会を交代してから1カ月――。「車へんに『歌丸』と書いて霊柩車」など番組名物となっていた“毒舌”を吐き続けたのが三遊亭円楽師匠(66)。39年間「笑点」で共演した円楽師匠が、司会を卒業した歌丸師匠への思いを初めて語った。
「歌丸師匠との出会いは、私が先代の圓楽師匠のカバン持ちを始めたころですから、それこそ47年ぐらいのお付き合いになります。初めてお会いしたとき、師匠は30代前半でしたけど、当時からおじいさんで(笑)。カバン持ちを経て正式に先代の圓楽師匠に弟子入りしてから、1977年8月に大喜利のレギュラーメンバーになりましたから、大喜利だけでも歌丸師匠とのお付き合いは39年になります」
大喜利メンバーとなった歌丸師匠だが、当初はまだ、キャラクターが確立しておらず、悩んでいた時期があったという。そんな円楽師匠にアドバイスをしたのが歌丸師匠だった。
「歌丸師匠が『楽さん(当時は三遊亭楽太郎)、困ったら俺のことを言いなよ。あとで編集するんだから何を言っても大丈夫だから』と。それまで師匠と『キザ!』『お化け!』とやり合っていた(三遊亭)小圓遊さん(1980年死去)が亡くなったあとでしたから。歌丸師匠にそう言われて『ああ、そうか。小圓遊さんがやっていたようなことをやっていいんだ』と思ったら楽になりました」
歌丸師匠の言葉で、“毒舌”キャラを始めた円楽師匠。しばらくすると師匠(先代圓楽師匠)が大喜利復帰を果たした。
「それで、師匠の『馬面ネタ』や『借金ネタ』もやるようになったら、師匠が『歌さん、こいつは悪いやつだね。腹黒いね。誰の弟子だい?』『圓楽さん、おまえさんの弟子だよ』(笑)。それから“腹黒キャラ”をどんどん作るように言われたんです。だから、キャラクター的にすべてができたのは、師匠たちのおかげでしょうね」
実は円楽師匠の前に、“毒舌”を売りにしていた小圓遊師匠は、最後は本当に歌丸師匠とケンカになってしまったという。円楽師匠は大丈夫だったのか――。
「視聴者のなかには『歌丸師匠の成仏ネタは縁起でもない。あとでケンカになったりしないのか……』と心配なさる方もいるようですけど、いまの大喜利のメンバーは年功序列をはじめとして楽屋がちゃんとしている。私は、歌丸師匠の車椅子を押したり、やることをきちんとやっていますから。私がやってきた師匠たちのネタだって、普段の信頼関係がなかったら『なに?この野郎!』ってなるんです。『人間、普段が肝心』と言うけれど、その通りで、肝心なのは普段。普段がちゃんとしていれば、おのずと信頼関係が生まれるんです」
最後に円楽師匠は、司会を卒業した歌丸師匠へのメッセージを――。
「師匠にはお体が続く限り落語をやっていただきたいし、私も『これからも師匠の背中を見て、ついていきたい』と思っています。歌丸師匠、本当にお疲れさまでした。そして、これからもよろしくお願いします」