連続テレビ小説『とと姉ちゃん』第15週は、常子(高畑充希)が、自分たちが作った「スタアの装ひ」の失敗の原因を解明するため、花山(唐沢寿明)を訪ねる。妻・三枝子(奥貫薫)が取り次ぐも、協力する気はないと花山の対応は素っ気ない。闇市ですでに常子たちの雑誌を手に入れていた花山は、売れない理由を次々と挙げる。雑誌で紹介されている服は、外国の富裕層が着るような服ばかり。服の作り方を載せても、このご時世、材料を入手するのは不可能。しかも、服の型紙すら載せないで、読者が服を作ることなどできない。「読者が全く見えてない」と酷評する花山。常子は、その指摘が全て的確なことに感銘を受け、花山に雑誌の編集長になってほしいとお願いする。

image

五反田(及川光博)に聞くと、花山は編集や広告の世界で知らない人はいないほどの才能があるにも関わらず、「二度とペンは握らない」とかたくなに断っているという。常子は、花山の働く珈琲屋を訪ね、編集の道を諦めた理由を尋ねるが、花山は話す気はないと店を飛び出す。残された常子に、コーヒーを出す関元(寺田農)。戦争で息子を亡くした関元は、息子の戦友だった花山について語り始める。花山は満州で結核になり帰国。その後、内務省で働いていた。関元の家を訪ねた花山に息子は戦死したことを告げると、その遺影の前で花山はずっと泣いていたという。そして、そのとき花山は言った。「8月15日、すべてに気付いた」と。それ以来、ペンを2度と握らないのだと説明する関元。一方、鞠子(相楽樹)と美子(杉咲花)は、何とか雑誌を売ろうと闇市の本屋を回る。販売の許可をもらうのだが、場所代を巡って怪しい男たちに絡まれてしまう。そこに仲裁に入ったのは、先日闇市で見かけた頼りなさそうな面持ちの水田(伊藤淳史)水田は事情をごまかし、何とか鞠子たちの危機を救う。

 

そんな折、常子は五反田に花山のことを報告する。五反田は、花山に出版業界に戻ってきてほしいと思っていること、そのため常子に花山を紹介したと打ち明ける。さらに人に滅多に興味を持たない花山が常子のことを覚えていたことについて「脈がある」という。説得された常子は再び喫茶店を訪れ、「8月15日に何に気づいたか」と尋ねる。すると花山は話を聞いたら帰ることを条件に、筆を折った真意を語るのだった。

image

花山は、自分の母親がコーヒーを好きだったせいで、自分も好きになったと話を切り出す。女手ひとつで苦労して自分たち兄弟を育ててくれた母親は、いつも苦しそうな顔をしていた。しかし平塚らいてうの『青鞜』を読み、表情が明るくなったと。「私もそんなふうにペンで力のある言葉を生み出し、人を救い、人の役に立つ仕事をしたい、と。そうして言葉や絵の仕事に就くようになった」と語る花山。しかし戦時中、その言葉の力によって多くの命が犠牲になったことを挙げ、「言葉の力は恐ろしい。そんなこともわからず、言葉に関わってきてしまった。そして、終戦になって、信じてきたことのすべてが間違っていたことに気づかされ、もうペンは握らないと決めた」と涙を浮かべるのだった。常子は約束どおり今日は帰るが、花山と一緒に雑誌を作ることを諦めないと訴える。戦後、金もなく仕事もなく、先行きが見えない中で必死に生きている多くの女性に役に立つ雑誌を作りたいからだ、と。そんな常子の熱意に心を打たれる花山だったが結局、編集の道には戻らないと誘いを断る。

 

だが常子が珈琲店を立ち去った後、花山は財布が落ちていることに気づく。捨てる訳にもいかず、花山は財布に書かれた住所を頼りに、常子の家を訪れる。すると君子(木村多江)に天井の修理に来た大工と間違われ、家の中に通されてしまう。自分は大工ではないと言い出せないまま、天井の修理をする羽目になった花山。とはいえ潔癖症で傷んだ場所をそのまま放っておけない性格。傾いたちゃぶ台まで直し始める花山を、すっかり大工だと思い込む君子と美子。2人は花山の前で、雑誌が売れないと家族が生活していけないこと、常子が花山を頼りにしていることを話す。2人の会話を聞きながら、常子が飾る3つの目標の札に目を留める花山。「家族を守る」「鞠子、美子を嫁に出す」「家を建てる」……。

image

帰宅した常子は、落としたはずの財布を見つけ、愕然とする。君子たちが花山を天井の修理に来た大工だと勘違いしてしまった。花山の説得に失敗したと落胆する。一方、花山は学生時代の友人から開発事業に誘われ、躊躇していた。「女の人の役に立つ雑誌を作りたい」といった常子の言葉が過る。このまま編集の道に戻らないでいいのか自問する花山。翌日、常子が財布を届けてくれたお礼と大工と間違えてしまったお詫びに喫茶店を訪ねると、花山から予期せぬ言葉を告げられる。「手伝う事にした!…雑誌の件だ! 嫌ならいいぞ。私が手伝わないと、君ら家族はしんでしまう。放っておけば1冊目のような酷い雑誌を作るだろう。売れる訳がない!売れなきゃどうやって飯を食う?」と。そうして花山は「一度きりだ」と重い腰を上げ、常子たちの雑誌作りに参加する。喜ぶ常子たちだが、それも束の間。花山は『スタアの装ひ』にダメ出しをしていく。美子の挿絵もダメ。鞠子(相楽樹)の文章に至っては“洋服”の単語だけしか残らない。最初は閉口するも、簡潔になるべく挿絵で表現しろと指導する花山に従う常子たち。早速作業にかかろうとすると、一番肝心なことがまだだと指摘され、常子たちは顔を見合わせる。

 

闇市に買い出しに行った常子と鞠子は偶然、水田と会う。水田が手に持っている大量の衣類について尋ねると、お金代わりに受け取ったのだと説明される。そのとき、常子は花山の問題の答えがひらめく。“服より大事なものは下着”だと。花山の答えは「正解」。洋服が着たくても下着がないと着られない。自分で作れるように、雑誌に下着の作り方を載せる必要があるという発想だった。花山の助言をもとに本格的に雑誌作りに取りかかる常子たち。完成した新しい雑誌は大好評で、飛ぶように売れていく。

 

一度きりの約束は果たしたという花山。引き続き編集長にと常子たちが懇願するも、花山の決意は固い。しかし常子は花山の中に新しい雑誌の構想があることに気づく。バラックで苦しい生活を続ける人々の姿を見つめる花山。常子は声をかける。花山が描く“暮らし”を題材にした雑誌を共に作ろう、と。そして、ついに常子の願いを聞き入れた花山。常子は、この仕事に人生を賭ける」と宣言するのだった。

image

第16週(7月18日〜23日)は、「『あなたの暮し』誕生す」。共に雑誌を作ることになった常子(高畑充希)と花山(唐沢寿明)は、衣服に関する話題を取り上げることを決める。そんな折、綾(阿部純子)が常子に金策に来る。仕事場にいるからと案内されて向かった先は、何とカフェー。綾に頼んで、カフェーの部屋裏で取材する常子。綾の先輩の梢(佐藤仁美)は、洋服を来てお洒落をしたいが、布がない上に洋裁の技術もないと言う。常子は、どうすれば庶民の暮しに役立つ衣服の企画となるか悩んでいると、和服を洋服に変える方法を生み出したと、花山が駆け込んできて…。

関連カテゴリー:
関連タグ: