「ナレーションをするたびに、知らなかった街の姿が浮かんでくるような、再発見の驚きがありました。タモリさんは地形に興味がおありで、坂や、窪みといった土地の高低差にこだわる独自の視点が、番組におもしろさをプラスしていたと思います」
そう語るのは、女優の戸田恵子さん(58)。戸田さんはタモリ(71)が街歩きをする『ブラタモリ』(NHK)の初代ナレーターを、’08年10月から’10年3月まで担当した。謎解きミステリー的な趣きもあって、常に根強い人気を誇る同番組だが、’15年4月から“ブラスポット”が全国に広がり、より人気が高まっている。
’16年5月7日の「京都・伏見〜伏見は“日本の首都”だった!?」の16%に続き、6月4日の「伊勢神宮〜人はなぜ伊勢を目指す?」では歴代最高の18.6%を記録。7月には『ブラタモリ』(角川書店)なる本も出た。そしてこの9月3日、五輪による1カ月の休止を経て番組が再開。
自身も「一ファン」だったという戸田さんに『もう一度タモリさんに行ってもらいたい場所ベスト3』を披露してもらった。
【東京・両国】
「相撲が大好きなので、興味があったのですが、江戸時代の大火のあとに仮設の商店街から発展したという歴史が鳥肌ものでした。大火の犠牲者を祀ったお墓がある回向院も興味深い。オットセイのお墓まであるんですから」
【東京・芝、愛宕山】
「芝周辺は、私も出演したドラマ『お水の花道』のロケ地でお世話になった懐かしい場所。愛宕山はNHKが日本初のラジオ放送を行った地ですね。武士が馬で石段を駆け上がって大出世したという伝説がある土地でもあります」
【東京・神宮外苑の絵画館前】
「外苑の中心にある聖徳記念絵画館。国会議事堂にも間違えられる重厚な外観。その前には幅60メートルにもなる大きな池があり、立派な噴水があります。この池が昔は子供用のプールだったのは驚きでした」
『ブラタモリ』が開始される際、番組スタッフにすり鉢状の地形のおもしろさなど、東京の地形の特徴を“伝授”したのが「東京スリバチ学会」会長の皆川典久さん(53)。皆川さんは、自身も出演した昨年7月の仙台には、もう一度タモリに再訪してもらいたいスポットが2カ所あるという。それが、タモリと一行を案内して、段丘のヘリをともに歩いた四ッ谷用水とへくり沢だ。
「四ッ谷用水は、伊達政宗が造らせた仙台市を横断する水路で、当時は生活用水として重用されていました。このように暗渠になった水路を街中で探すのも冒険のようで楽しいですよ。仙台の城下町が台地の上に作られたことがわかるすり鉢状の“へくり沢”もタモリさんは喜んでくれましたね。タモリさんは長年の経験から、下を向いたり横道に逸れることの大切さを感じ、そこから広がる世界があることを教えてくれているんです」(皆川さん)
坂、谷、窪地など“ブラタモ的”視点を念頭に置いて歩きつつ、あなたも、まずは身近な場所の地形や歴史から見直してみては?