パリ在住の作家、辻仁成(57)がまた新たなステージに挑戦する――。今月21日に創刊されたばかりのWEBマガジン『デザインストーリーズ』の編集長を務めるのだ。
早速、創刊直後の辻編集長に話を聞いた。
「活字離れ久しいこの時代に、あえてもう一度物語の力を、と思い創刊しました。『デザインストーリーズ』は、人生を力いっぱい生きている人たちの“ライフスタイルマガジン”なのです。単なる情報ニュースよりも、そこに書き手の人生の“物語”を大切にしています」
こうして創刊された『デザインストーリーズ』は、今までになかった全く新しいWEBマガジンだという。
「本誌のいちばんの特徴といえば、なんといっても誌面が美しいこと。僕自身が世界中を飛び回って素材探しをするなど、ビジュアルには特にこだわって作っています。現在、ウェブのトップページにはロシアの写真家が撮った写真を載せています。ロンドンの写真展の記事をBBCのツイッターで見つけたとき、その中の1枚の写真に惚れ込んだのです。タイトルと写真家の名前を調べ、自ら問い合わせをし、交渉をしました。まだ創刊もしてない雑誌だったので交渉には一苦労。説明するのに、英語、ロシア語を駆使し、自分が何者であるのか英語のウイキペディアを貼って送り付け、最終的に協力を得ることが出来たのです」
さらに、『デザインストーリーズ』のなかには、世界で活躍する日本人9人の人生哲学を発信する『ナインストーリーズ』というセクションがある。
創刊時に顔をそろえたのは、サッカー選手の岡崎慎司、高野山金剛峯寺のふすま絵を手掛けた日本画家の千住博や、“建築界のノーベル賞”として知られるプリツカー賞を受賞した建築家の坂茂、日本人で初めて『イタリアンヴォーグ』の表紙を撮った写真家のサイクササトシなど、錚々たる面々。各ジャンルの第一線で活躍する人物が自ら記事を書いているところも見どころだ。なかでも、岡崎選手とはこんなエピソードがあったという。
「『ナインストーリーズ』は、僕が旅先で出会った、外国で生きる逞しい日本人たちに声をかけて書いてもらっています。昨年、イギリスで奇跡の優勝を果たしたレスターの岡崎慎二選手もその一人です。しかし、彼から届いた最初の原稿はプロとは違う筆致でした。ぼくが添削をすると、『こうやって本が出来ているんですね』と感動をしてくださいました。彼は良い書き手になるでしょう。しかし、誰でも書けるわけじゃないんですよ。やはり何か熱い闘志とか情熱とか生きざまを持ってる人じゃないといけません。岡崎さんが書いた文章は、創刊号の中でも珠玉の記事となりました」
最後に今後の想いを語ってもらった。
「今まで編集者の経験はなかったので、未知の世界で活躍する方々との出会いを楽しんでいます。読者のみなさんに様々な可能性を提示できるライフスタイルマガジンを作り出していきたいです」