今年スタートした『おんな城主 直虎』で56作目となるNHK大河ドラマ。国民的番組のこのドラマは、つねに時代を映しつづけてきた。そこで、“大河のヒロインが映す時代”と題し、豪華な女優たちが演じたヒロイン像とその“時代”を、テレビウオッチャーでコラムニストの林操氏とともに振り返る−−。
■1983〜1992年「バブル経済」のマッチョな作品のなかで異彩を放った『春日局』の“女の強さ”
バブル景気に沸いた’80〜’90年代初頭。大河ドラマもまた沸き返っていた。上がり続ける地価と株価を、誰もが信じて疑わなかったこの時代、颯爽とした力強い女性主人公の登場が目立っていた。
「このころ、近現代物が3作続きました。好景気に後押しされ、新しいものに挑戦していったんでしょうね。そんな時代に、女優、女医、大奥のボスという『働く女』たちを主人公にした作品も放送された。イケイケの時代に、男と伍していく強い女性が望まれていたのでしょう」(林氏・以下同)
’85年の『春の波涛』では、明治時代に日本初の女優として活躍した川上貞奴を松坂慶子が演じた。元祖・働く女の物語だ。翌年には、三田佳子が演じる架空の女医が主人公の『いのち』(’86年)が放送される。これは「働く」「自立した」女性の一代記。
「日曜夜のチャンネル権は男が握っていた時代に、主婦が率先して大河ドラマにチャンネルを合わせた最初の作品かもしれません」
そして’89年には大原麗子演じる『春日局』が放送。男社会を生き抜くしたたかな女性像であり、大奥という女性社会をたばねた春日局の人生が共感を呼び、平均視聴率も30%を超えた。
「『男も女も敵』という状況を生き抜いていく姿は、まさにこの時代の象徴だったのでしょう」
浮ついた時代の中、女性は着実に強くなっていた。