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歌手の安室奈美恵さん(40)が2018年9月16日で引退をすると、公式サイトで発表されました。25周年の節目ということで、長きにわたり計画していたという今回の決断。芸能界からも惜しむ声が寄せられています。

 

引退を称する言葉として「1つの時代が終わった」「憧れそのもの」「生きる伝説」などなど、彼女を神格化する声が大きく批判的な声は皆無。それはひとえに、一貫したプロ意識が評価されていることに他なりません。

 

彼女が残したCD売上などの記録が素晴らしいのは当然として、彼女が“伝説”と呼ばれるのには理由があります。それは、他の歌姫と呼ばれる存在やヒットを飛ばし続ける音楽アーティストとは存在感が異なるという点です。

 

そこで彼女の凄さを改めて考えるべく、25年間の彼女のインタビューや記事などを改めて読み返すことに。彼女が一人の沖縄出身歌手から社会現象を巻き起こす時代のアイコン、そして歌姫へと変貌を遂げた理由を読み解いていきます。

 

■ブレない歌手としての生き方

 

彼女の魅力を女性が語る上で必ず出てくるキーワードは「かっこいい」という賞賛です。それは40歳の今だけでなく、「アムラー」を生み出していた10代も、母となった20代、アーティストと呼ばれる30代でも用いられてきました。

 

つまりアムロちゃんに寄せられる「かっこいい」という言葉が、容姿だけを指すのではないことは明白(もちろん容姿も美しいのですが)。そこで彼女のかっこよさを追いかけると、「一貫性」というキーワードが浮かんできます。

 

たとえば彼女のインタビューではアーティストとしての存在意義が語られますが、いつの時代も「歌とダンス」というキーワードをいちばん大切にするようなコメントが出てきます。

 

「昨年(1995年)の後半は、歌とダンスの仕事ばかりやらせてもらっていたんです。周りのスタッフも、自分の好きなことをやればいいよって言ってくれたから」(Bart 1996年8月号)

 

「やっぱり一番やりたいことはライブですね。私にとっては歌って踊るっていうのが、すべてなんで。(中略)二つが一緒になって初めて、安室奈美恵って人が完成すると思うので」(BREaTH 2002年10月号)

 

「アーティストとして、永遠に変わらないだろうなと思うのは、“歌って踊れる”ことへのこだわりなんです。歌だけなら私よりうまい人はたくさんいるし、踊りだけでもやっぱりかなわない人はいる。でも、歌と踊り、二つがあわさったときには、絶対に一番になれるという思いがある」(FRaU 2003年3月号)

 

売れ始めから母となっても、そして今でも「歌とダンス」という2つのキーワードが揃って安室奈美恵である。そのスタイルもクオリティも崩れないことこそ、彼女が「かっこいい」と言われ続けるいちばんの理由なのでしょう。

 

また過去のインタビューでは、ブレない彼女の一面も見つけることができます。「アムラー」が生まれた時代、アイコンとしていわれていたのはシャギーの入ったロングヘアにマイクロミニにロングブーツ。そして顔に描かれた細眉です。

 

この極細眉毛について、彼女は雑誌の対談時に「世が太眉になっていくなら、太くする?という問いかけに対し「しない。私は私だもん。自分の顔に合った眉をしてたいし。」(JUNON 1997年5月)と回答しています。

 

そこから20年たった今。彼女の顔をみると形こそ変化をしていますが、いまだ細い眉毛が健在。時代はナチュラル太眉ブームですが、そこに流されることなく一貫性を貫く彼女はやっぱりかっこいいです。

 

■ピーク時に決断できる力

 

彼女のかっこよさ語るうえでもう1つ欠かせないのが、常人では立ち止まったり先延ばしにしまうであろう“勇気ある決断力”です。

 

みなさんも記憶にあるかもしれませんが、彼女は二十歳という人気絶頂時に妊娠結婚から1年間の育児休業を決断しました。おそらく多くの人が同じ状況になれば、このタイミングでの妊娠出産や休業に不安を抱くと思います。その証拠に、多くの芸能人は子を持ったとしても1年間も休んだりしていません。

 

もちろん時代が違いますし、休むから良いとか悪いとかではありません。ただ彼女はこの時期のことについて「子供を産んだ後は、無事に産まれたっていう安心感と、もう歌えるし動けるんだっていう気持ちがすごくあって、それからは歌いたいとか踊りたいっていうよりも、もう少し休んでおこうかなっていうふうに変わったんです」(JUNON 1999年3月)と語っています。

 

つまり、休むことで“ダメ”になる自分は想像していない。その精神的な強さや割り切り、そしてパワーこそが女性に憧れを抱かせるのではないでしょうか。

 

他にも二十歳の記念に象徴ともいえるロングヘアをショートカットにしたり、実母の事故死からの短期間での活動再開。そして事務所の独立など、彼女の活動の裏には常にセンセーショナルなできごとと大きな決断があります。

 

多くのアーティストが過去の成功を引きずったり短期間で消えていったりしていくなか、彼女は体もモチベーションも衰えることなく前に進んでいる。それこそが見るものが賞賛する「伝説」としての理由なのかもしれません。

 

■でもなぜ、今引退なのか……

 

今も輝き続け、パフォーマンスの衰えを感じさせることのないアムロちゃん。彼女の引退について、各紙が「完璧を追求する上での彼女なりの決断」や「独立後の前事務所との確執」など様々な憶測を語っています。そして筆者も「なぜ?」と疑問に思う記事に遭遇しました。

 

それは2012年に20周年を記念したロングインタビューで、20年歌って踊ることをやめなかった理由について聞かれたシーンです。

 

続けられた理由として彼女は「憧れであるジャネット・ジャクソンが今も歌って踊っているから」と「単純にこの世界がダメなら別の道に行くという選択肢がなかった」の2つを述べています。同時に「私は歌って踊ることがしかできないんです。だからこそ、今は、どうすれば1年でも2年でも長くやっていけるかを、いつも考えてますね」(MORE 2012年8月号)と語っているのです。

 

また体力のいるステージについて問われた際には「40代になった時には、昔とも今とも違う、40代なりのよさのある私が見せられればいいな、と思っているんです」と、5年後くらいのことまでは具体的に考えていると語っています。

 

今までどの記事を読んでも、発言の一貫性が崩れることがあまりなかったアムロちゃん。ともすれば今回の引退という決断も、目標の1つに組み込まれていたのでしょうか。

 

「(5年後のプランを問われ)みんなから“あの人、素敵な毎日を過ごしているんだろうな”って思われるような女性にはなっていたいですね。うん、ずっと輝いていたい!」(MORE 2012年8月号)

 

そう語るアムロちゃん。彼女ほど長く時代とともに輝き続ける女性は、もう日本の音楽シーンでは生まれることはないのかもしれません。今回の引退決断には若干の疑問を感じるものの、引退した彼女が「あの人、素敵な毎日を過ごしているんだろうな」と思える人生をこの先も歩んでくれたらと思うばかりです。

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