NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』の第1週は、昭和9年。主人公・坂東すみれ(渡邉このみ)は、繊維会社「坂東営業部」を営む父の五十八(生瀬勝久)、姉のゆり(内田彩花)と一緒に神戸の洋館で暮らしていた。ある日、すみれは入院中の母・はな(菅野美穂)にあげようと、初めて刺しゅうに取り組む。
お見舞い当日、すみれは完成した刺しゅうをみせるが、「なんやこれ?」と五十八。傷ついたすみれは、逃げるように病室を飛び出す。しかし母のはなだけは、ゆりとすみれの花を刺しゅうしたものだとわかっていた。母に刺しゅうを渡せなかったすみれは「もっと上手くなろう」と再び刺しゅうをやり直すのだった。
そんなある日、坂東家では新築披露パーティーが開かれる。パーティーを抜け出し、自室で刺しゅうをしていたすみれ。「ゆりとすみれや!」と突然、幼なじみの潔(大八木凱斗)に声をかけられる。「ええやん、頑張りや」という潔の言葉に勇気付けられるすみれ。
数日後、坂東邸を見学ため、潔が子供たちを連れてやってくる。そのなかには坂東家で女中として働くマツ(中島ひろ子)の娘・明美もいた。邸内を見学する明美はテーブルの上のキレイなお菓子に目を奪われる。そこへ現れた女中は明美を泥棒扱いし、叱責する。一部始終を見ていたすみれは、帰る明美を追いかけ、菓子を手渡す。だが明美は菓子を道に投げ捨ててしまう。
邸宅では、ゆりの靴を作るための採寸が行われていた。すみれは屋敷に出入りする靴屋の麻田(市村正親)から、靴が針と糸を使って作られていることを教わる。作りが気になったすみれは、五十八のお気に入りの靴をバラバラにしてしまう。さらに靴作りが見たくなったすみれは、靴を修理してもらおうと麻田の下へ向かう潔に頼み、一緒に街に出かけるのだが……。
神戸の街の喧騒のなか、すみれは、潔に手を引かれ麻田の店に向かう。バラバラになった靴を見て驚く麻田。「どないしたらこんなことに……」。潔は、靴を作るところを見せてやって欲しいと麻田に頼むのだが、すぐにすみれを連れて帰るように諭される。
帰宅途中、デモ隊に遭遇するすみれと潔。人波にのまれ、すみれは潔とはぐれてしまう。見知らぬ男に声をかけられ怯えるすみれは、街のなかをひとり逃げ回る。すると偶然、自邸で見かけた明美と再会。明美に案内され麻田の営む靴屋に戻ったすみれは、真剣に靴作りに取り組む麻田の姿を目にするのだった。
作業の合間、すみれの気配に気づく麻田。坂東家の迎えを待つ間、すみれにはなの話をして聞かせる。ゆりとすみれが結婚するときに靴を作って欲しいとはなから頼まれていると明かす麻田。そしてなぜ、それほどまでに靴を作るところを見たいのかと問いかける。
はなに贈る刺しゅうが上手に出来ないと言うすみれに麻田は、誰だって最初から上手くいかないと慰める。「思いを込めたら伝わるんです。誰が、どんな思いを込めて作るのか。それが一番大事なことなんです」と説く麻田。すみれは母に刺しゅうを贈る決意を新たにするのだった。
「謝って済んだら、警察はいらん!」。すみれの外出騒動を知って激怒した五十八は、麻田や潔らを責め立てていた。麻田が完成したゆりの靴を差し出すと、収まりかけていた五十八の怒りが再び爆発。靴を持ち帰れと命じ、今後、麻田から靴を買わないと言い放つ。
普段はおとなしく何も言わないすみれだったが、勇気を振り絞って五十八に立ち向かう。「麻田さんが履く人のことを思おて作ってくれる靴。女学校に上がるときも、お嫁さんに行くときも、お母様が頼んでくれた靴を履きたい」と訴える。すみれの思いを知った五十八は、全て許すことを決める。
「勇気があるんやな、たいしたもんや」と潔に褒められ、嬉しく思うすみれ。いっぽうその日、坂東家を訪れていた貴族院議員・田中五郎(堀内正美)の息子の紀夫はすみれの様子をずっと伺っていた。そして、自分の胸の高鳴りに動転するのだった。
後日、入院中の母・はなに会いに行ったすみれは、幾度となく作り直した刺しゅうを手渡す。それを見たはなは「一生の宝物や。べっぴんやな」と喜ぶ。はなに教わりながら、ハンカチに四つ葉のクローバーの刺しゅうをするすみれ。四つ葉のクローバーの意味を覚えているかを訊かれ、すみれは「勇気」「愛情」「信頼」「希望」、全部揃うと幸せになると答える。「忘れへんよ、お母さんと約束したんやもん」と微笑むすみれを、はなは強く抱きしめる。
余命いくばくもないまま一日だけ退院してきたはな。初めて見る新居の豪華さに驚き、家中に飾られた花々に包まれる。テラス席に座り、ゆりとすみれが庭で遊ぶ様子を眺める2人。五十八は、病弱なはなに苦労をかけたことを後悔していると謝る。「坂東営業部」が成功したのも、こんな大きな家が建てられたのも、これまで幸せだったのも、全部はなのおかげだと礼を言う。
「五十八さん、娘たち、お願いします」とはな。ゆりは強く見えても、ここぞというときで自分を貫けないところがあり、そこが心配だと語る。また、すみれに至っては、ああ見えて芯の強い子だと言い、ボーッとしているように見えるが、夢を見たり、好きなことを考えたりしているだけだと五十八に説明する。「私らにとって、あの子らは特別。べっぴんさんや」と涙を流すはなは。娘たちを託された五十八は「任しとけ」とはなの手を強く握る。
翌朝すみれが目を覚ますと、壁にははなが娘たちのことを思って刺しゅうしたタペストリーが飾られていた。美しさに感動するすみれ。ゆりとすみれがおなかにいるとき、はなが娘たちの健康と幸せを願い、思いを込めて作ったものだと五十八に聞かされる。すみれは病院に戻るはなに「思いを伝えられるようなべっぴんを作れる人になる」と約束する。「ええなあ。なれるよ、絶対」とはな。そして数日後、天国へと旅立つのだった。
それから8年後、17歳になったすみれ(芳根京子)は、女学校に通っていた。仲間の多田良子(百田夏菜子)、田坂君枝(土村芳)と3人で手芸倶楽部を結成していたが、太平洋戦争の影響で生活の変化を余儀なくされる。
「贅沢は敵」というご時世。女学校では、英語の授業がなくなったことを憂う学生もいた。商いを縮小することになった坂東家では、使用人たちに暇を出すことに。大学を卒業したら「坂東営業部」で働きたいと言うゆり(蓮佛美沙子)に、五十八は「先の分からない時代だからこそ、ゆりにもすみれにも家庭に入り幸せに結婚して欲しい」と告げる。
そんなある日、すみれは潔(高良健吾)に召集令状が届いたことを知り、自分の恋心に気がつく。しかし、じつはゆりも潔に好意を寄せていた。すみれは潔に言われた言葉を思い出す。それは、「何が自分に降りかかるか分からない時代、ちゃんと自分のやりたいことを見つけて悔いのないように生きろ」というものだったーー。
第2週の「べっぴんさん」は、早くも急展開。すみれは幼なじみの潔に思いを寄せていたが、姉のゆりと結婚することになる。思いを告げることなく失恋するすみれ。潔とゆりの結婚式で、祖母のトク子(中村玉緒)から五十八とはなの苦労話を聞き、家への思いを強くする。五十八からきた縁談話をすぐに承諾するが、その相手は幼なじみの田中紀夫(永山絢斗)だった。そしてつかみ所のない性格の紀夫との生活が始まる……。