連続テレビ小説『べっぴんさん』の第15週は、昭和26年3月。すみれ(芳根京子)は靴職人の麻田(市村正親)の元を訪れ、娘のさくら(栗野咲莉)の入学式用の靴を作ってもらえないかと頼む。麻田はすみれの注文を引き受けるが、実はある悩みを抱えていたのだった。そのことに気づかないすみれは麻田がさくらの足型を取る様子を見守りながら、自分の子供時代、紀夫(永山絢斗)と結婚するときを思い出す。「麻田さんの靴はね、履くと幸せになる靴なのよ」とすみれ。

 

一方、ベビー服店・キアリスでは、急激に売上が落ちるという事態が起きていた。原因はわからないままだったが、ある日キアリスの商品の偽物が出回っているという情報が入る。時子たちが持ち込んだ肌着はキアリスが販売しているものと似ているが、縫い目はガタガタで糸もほつれ、品質は全く別物。すみれたちは偽物を売る店に乗り込む。

 

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「キリスアの子供服」と旗が立つその露店では、たくさんの女性たちが我先にと赤ん坊の肌着を奪い合うように購入していく。店頭に立つ男に、これは偽物で自分たちが本物だと話していると、背後から「これも本物のキリスアやけど? 何か?」と声が。その声の主は以前、明美(谷村美月)にキアリスの偽物を売って稼ごうと話を持ちかけた玉井(土平ドンペイ)だった。

 

すみれたちは、偽物を本物だと信じて買うお客さんもいるから、偽物を作らないでほしいと主張する。しかし女性客たちは高いキアリスの商品よりも安い偽物で十分だと言い、「本物のキアリスは子供服のくせに高すぎるんや!」と口々に言うのだった。その言葉にショックを受けるすみれたち。

 

すみれと紀夫が帰宅すると、麻田が訪ねて来ていた。麻田は、一度は引き受けたさくらの靴作りを断りたいと言い出す。「まだまだ作りたい気持ちはあるんです。そやけど、体がようついていかんのです」と麻田。すると、さくらが「嫌や!」と言い、どうしても麻田に靴を作ってほしいと頭を下げるのだった。

 

すみれが、靴屋をのぞくと娘のさくらが真剣なまなざしで靴を作る麻田の姿を見つめていた。さくらの靴作りを断ると言った麻田だったが、見えづらい視界や力の入らない手でさくらの靴の型を作っていたのだ。「私の靴作ってたの?」とさくら。すみれも最後まで作ってもらえるよう頭を下げるのだった。「麻田さんが、さくらに作ってくれたら、それがいいんです。麻田さんが、思いを込めて作った靴をさくらに履かせてやりたいんです」と必死に麻田を説得するすみれ。

 

「わかりました」。思うように手が動かなくなっていた麻田だったが、職人としての最後の靴作りに挑むことを決意する。あさや靴店に遊びにやって来たすみれたち4人は、麻田から「何か作って売ったら?」と言われ、全部ここから始まったと語り合う。すみれはキアリスの偽物を買いに来ていた女性たちの言葉を思い出し、ふと「今までどおりで本当にええのかな」とつぶやくのだった。

 

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後日、あさや靴店では、すみれたち4人と紀夫、良子(百田夏菜子)の息子の龍一や君枝(土村芳)の息子の健太郎も見守る中、麻田が完成した靴をさくらに渡される。完璧な靴を作ることができなくなったが、今、すべきことをするだけだという思いでさくらの靴を作ったと話す麻田の言葉に、「すべきこと?」とすみれ。すると、麻田はこう語る。「本物を作る。想いをこめて作る。どんなことがあっても、それを貫き通す。それだけです」。麻田の言葉がすみれたちの心に響く。そして麻田は、靴屋人生に幕を閉じると宣言するのだった。

 

明美は、キアリスの偽物商品を作る玉井の下を訪れる。露店には、女性客たちが1回洗濯したらデロンデロンだと文句を言いにやって来ていた。明美に気づいた玉井が何かようかと声をかけると、「文句言いに来たけど、言うまでもないな。本物は絶対に負けへんのや」と明美。露店を後にする。

 

さくらの入学式の日がやってくる。嬉しそうにはしゃぐさくらを見ながら、麻田はキアリスの社長を辞任したいと申し出る。不安そうな表情を浮かべるすみれ。すると、さくらの服の四つ葉のクローバーの刺繍をさしながら、前を向こうと顔を上げることができれば『勇気』、『愛情』、『信頼』、『希望』が見えると言い、「大丈夫」とすみれの背中を押す。「麻田さん、行って来ます!」。入学式へと向かうすみれと紀夫、さくらを見送る麻田は優しい微笑みで手を振り続けるのだった。

 

昭和34年。キアリスは10周年を迎え、全国的に知れ渡る企業に成長。すみれは、お客さんの対応に追われ日々忙しく働いていた。ある日、店に大急百貨店の小山(夙川アトム)から電話が入る。「大変なご用命をいただいた! 今度お生まれになる皇太子ご夫妻のお子様です!」。このことがきっかけで、キアリスの名は日本全国に知れ渡ることとなる。全国からキアリスの商品を買いに来るお客が増え、店は連日賑わいを見せる。

 

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すみれはキアリスの専務で34歳になり、紀夫はキアリスの社長で40歳。ベビー相談もあいかわらず盛況な明美は、キアリスの取締役で35歳。また君枝の家の2階のキアリスの製作所もミシンや人が増え、大きくなった。良子は製作所所長の役職で、君枝はデザイナーとして活躍し、ともに34歳。

 

一方、子供たちは、すみれの娘・さくら(井頭愛海)と君枝の息子・健太郎(古川雄輝)は15歳になり、高校受験を控えていた。仕事が忙しく、家族でゆっくり過ごす時間が持てないことに寂しさを抱えるさくら。高校受験当日、試験開始の合図が言い渡されるが、さくらは手を動かそうとしない。「いい子に育ってくれてよかったなあ」という父の言葉と、「そやから安心して家を空けられるよ」という言葉が頭に浮かぶ。

 

試験後、幼なじみの健太郎を訪ねるさくら。そして、苦しい胸の内を明かす。親からいい子と言われるが、そういう自分が嫌だ、と。試験の回答用紙を白紙で出そうとしたが、その勇気がなかったと語る。「それで良かったんや。困るのは結局、親やない。自分自身やからな」と健太郎。

 

そうして合格発表の日、さくらは受験番号を見つけ、ホッとする。しかし周りを見渡すと、ほとんどの生徒たちが母親同伴で見に来て、抱き合って喜んでいる。寂しい思いがこみ上げるさくら。その晩、さくらの合格祝いをすると約束したすみれと紀夫だったが、東京の松島屋に商品が届いていないという緊急事態の対応に追われる。喜代が用意したごちそうを前に無言のさくら。すみれから急に東京にいくことになったから、祝いは改めてすると連絡が入る。さくらは文句も言わず、明るく装うが、その表情は暗い。

 

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すみれと夫の紀夫はキアリスの仲間を家に招き、娘のさくらと君枝の息子・健太郎の高校入学祝いのパーティを開く。良子の息子・龍一(森永悠希)は、さくらと健太郎に大人の世界を見せてやろうと、パーティを抜け出して二人をジャズ喫茶「ヨーソロー」に連れて行く。そこでさくらはプロを目指すドラマーの河合二郎(林遣都)と出会う。二郎の演奏を食い入るようにじっと見つめるさくら。

 

すみれは、初めて実施するキアリスの入社試験のことで頭がいっぱいになっていた。

そんなある日、娘のさくらが「具合悪い」と珍しく学校を休むことに。学校に欠席連絡を入れた後、すみれと紀夫が出かけると、さくらは家を抜け出し、ジャズ喫茶で働く山本五月(久保田紗友)と買い物にでかける。五月が家出中で彼氏と同棲していると聞き、驚くさくらだったが、その奔放さに惹かれるのだった。数日後、さくらは買った服を来てドラマーの二郎が演奏するナイトクラブ「青い月」を訪れる。

 

すみれはキアリスの仲間と入社試験の結果について夜遅くまで話し合いを続けていた。紀夫や良子、明美は「西城一郎」という賢く、大学も申し分ない男性を推すが、すみれは、優しく、子供にもわかりやすい色使いでライオンと女の子を描いた「中西直政」を推す。絵だけで判断するのはどうかと反対する明美たちに、「私は、ここが大事やと思います。子供みたいな気持ちを持ってるというか

と引かないすみれ。

 

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一方、娘のさくらは、友人の山本五月に連れられナイトクラブに来ていた。「健太郎、すごい世界やろ?知らへんかったやろ?自分が井の中の蛙やって思ったやろ?」と得意げに話す龍一。派手な服装で楽しそうに踊る人々を前に圧倒されるさくらだったが、その視線の先にはドラムを叩く二郎の姿があった。「子供は、はよ帰った方がええ」と二郎に言われ、ダンスの輪に入って踊り始めるさくら。そして演奏を終えた二郎に近づく男が。「エイスの社長」と呼ばれる男は昔、すみれたちの前から姿を消した栄輔(松下優也)だった。

 

ジャズ喫茶「ヨーソロー」に戻って来た龍一たちは栄輔の話をしていた。「ファッション関係の社長さんや、エイスいうな。神戸に住んでる若いもんの間ではもうそらすごい人気者なんやで!

と得意げに話す龍一。そこへ栄輔が部下とともに現れる。部下は、キアリスの偽物を販売していた玉井だった。自分の会社の服を宣伝してくれてと洋服を渡す栄輔に、二郎も一目を置いている様子。栄輔は、玉井と五月たちの会話から「さくら」という言葉を聞き、ハッとする。さらに、その女の子が、幼なじみの龍一、健太郎の母親たちと女学校から仲良しで一緒に店をやっていると知り、「君、名字は?」と栄輔。「坂東です。坂東さくらです」と言うさくらを見つめ、言葉を失う。そして、さくらを可愛がっていたころの情景が栄輔の脳裏に浮かぶのだった。「気をつけて帰りや」。そう言い残し、店を出る栄輔。

 

その晩、仕事を終えたすみれと紀夫は、駅前の繁華街を通りかかる。人波の中、制服に着替えてヨーソローから出て来たさくらが人とぶつかり、怒鳴られている。何気なしに声のするほうに振り返ったすみれは、一瞬、さくらを見かける。「さくら?まさか」。さくらがこんな時間に、ここにいるはずはないと思い直し、すみれは家路を急ぐのだった。

 

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第16週の『べっぴんさん』、キアリスの新入社員採用試験の準備で帰りが遅くなったすみれは紀夫と一緒に帰宅するも、さくらは家にいなかった。探しに行こうと慌てて外に出たところに、さくらが幼なじみの健太郎、龍一と帰ってくる。3人がナイトクラブに行っていたと知り、紀夫とすみれは激しく怒るが、親の心配をよそにさくらは大人の世界へ進んでゆく。誕生日にジャズ喫茶「ヨーソロー」を訪れたさくらは、アルバイトの五月とドラム演奏者の二郎にサプライズで祝福される。感激したさくらはそのまま再びナイトクラブへ。

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