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愛を渇望する心は不滅だ。

 

今週2つのニュースを聞きながら、そんなことを考えました。1つ目は5月30日に4度目の結婚と妊娠が判明したタレントの清水国明氏(67)。2つ目は6月1日に2度目の結婚を発表したソフトバンクホークス球団会長・王貞治氏です。

 

清水氏が67歳、王氏が78歳。一般人なら定年まで勤めあげ、第2の人生を謳歌しているころでしょう。そんな2人の恋愛模様と周りの反応をみながら、そろそろ私たちも「一生涯恋愛すること」について考えるべきだと思うのです。

 

■「老人は老人らしく」という潜在的なやさしい偏見

 

たまたま同時期に世間に報じられた2つのニュース。1つは67歳の元気すぎるデキ婚と報じられ、1つは78歳の純愛と報じられました。結果は違うけど、動機は同じ。愛を求め、異性を求め、恋愛をしただけです。しかしバックグラウンドと見え方が違うだけで、リアクションがネガティブにもポジティブにも振れすぎる。そこには私たちの中にある“やさしい偏見”が関係しています。

 

やさしい偏見とは、「高齢者は性愛とは無縁である」「高齢者とは穏やかに生きることが幸せである」という思い込みです。たしかに年を取れば人間から性欲は削ぎ落とされ、体力も落ちていき、穏やかでつましい生活になっていくかもしれません。それは大方間違っていないのですが、一方で高齢者の定義が時代に追いついていないようにも思います。

 

たとえば高齢者の定義は国連で60歳以上、WHOで65歳以上と定義されています。一般社会的でも年金受給がスタートする65歳を想像している人も多いです。しかし日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が80.89歳の時代です。そう考えると、高齢者の定義は65歳でいいのか曖昧です。65歳でリタイアしたとして、そこから約20年の人生というのは幸福度に大きく関係する長さです。

 

ただ穏やかに余生を過ごすだけでは長すぎる。そこで独身男女はもう一度結婚をと考えるものの、世間一般的には“リタイアした高齢者”のイメージが。そのため、恋愛に対して良くも悪くも偏見や抵抗感が生まれてくるのです。

 

■“セックス”を感じさせる恋愛が嫌悪される高齢者の恋愛

 

王さんの結婚について「責任感がある」「カッコイイ」とポジティブな声が大きいのですが、実はこれも2つの偏見が入っているように思います。それは「前妻と娘に義理立てしたように見える」点と「穏やかな高齢者の年相応な恋愛に見える」点。それらがただの高齢者の結婚を美談に見せていると思うのです。

 

比較として上げるは、清水国明氏の67歳デキ婚です。こちらも高齢者の結婚に含まれるわけですが、裏に「25歳年下妻が妊娠」「4度目の再婚」という性的なパワーを感じさせるため「気持ち悪い」「信じられない」と反感を買っています。

 

しかし捉え方を変えれば突発的な妊娠の責任を取れると判断し、行動を取ったわけです。ある意味、甲斐性がある行動です。もちろん憧れはしませんが、「元気すぎる!!」と感動すら覚えた人は本当のところ多いはずです。

 

私たちは有名人の恋愛には、その人物のキャラクターや今までの行いを踏まえて感想を持ちます。高齢者の恋愛というニュースにはさらに「高齢者」という言葉のイメージを重ね、より偏った見方をしがちである。そのことに、少し自覚的になってもよいのではないでしょうか。

 

■ある日父が再婚!その時子どもが注意すること

 

高齢者は体力もなく穏やかに余生を過ごすのみ、そう一括りにしがちです。しかし、「老害」などのフレーズも耳にする機会が多くなっている通り、老人は良くも悪くもイメージよりもずっと元気です。その1つがこうしたシニア恋愛の活性化であり、これは時代の流れとして必然といえます。

 

とはいえ老い先がそこまで長くない者同士の結婚。もしあなたの高齢になったご両親が再婚を言い出した場合、必ず明確化させておくべきことがあります。

 

1つ目はどちらかが体調を崩した場合の介護の問題。
2つ目は両者が持つ遺産の問題。
3つ目は持病や終活など生き方の確認です。

 

1と2は多くの人が予想している内容だと思うので割愛します。3つ目の問題は、意外と持病について隠したまま恋愛関係を発展させる男女も多いといいます。特に再婚者同士の恋愛の場合、どう生きるかなどについてもきちんと話し合っておくべき内容です。

 

現役世代には想像しにくい高齢者の恋愛模様。もちろん人によって熱さも内容も異なるものですが、「年を取ったら穏やかに過ごすのが人間らしい」という価値観は古いのです。

 

「愛は不滅だ」と様々な名言で語られてきましたが、本当は「愛を求める心は不滅」なのかもしれない。元気な60代70代を目にするたび、筆者はそんなことを考えるのです。

 

(文・イラスト:おおしまりえ)

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