広瀬すず(20)主演の連続テレビ小説『なつぞら』は最高視聴率23.6%を記録。なかでも“泣ける”と話題なのが、戦災孤児の奥原なつ(広瀬)を引き取った北海道・十勝の酪農一家の大黒柱・柴田泰樹役の草刈正雄(66)の名演技だ。そんな草刈の役者の“原風景”は北九州市・小倉の映画館にあった。
「草刈さんは学生時代に、うちの姉妹館である富士館にお母さまと通っていらしたんです。うちが創業80周年を迎えるにあたって、この3月末に草刈さんが舞台挨拶に来てくださったんです。私の夢だったんですよ」
声を弾ませてそう語るのは小倉昭和館の館主・樋口智巳さんだ。今春、この映画館で草刈の昨年の主演映画『体操しようよ』と、若かりし頃の代表作『汚れた英雄』(82年)の2本が上映されたのだ。
草刈は52年、福岡県小倉市(当時)で米国人の父と母・スエ子さんとの間に生まれた。しかし、米兵だった父は草刈が生まれる前に朝鮮戦争で戦死。母子2人で4畳半の部屋に間借りして暮らしていたという。
草刈は一昨年の本誌のインタビューでこう語っている。
「母は日用品の卸売店で働きながら、女手ひとつで僕を育ててくれました。母は映画が好きな人でね。僕が小学校低学年だったころ、うちにはテレビがなかったものですから母と行く映画が唯一の娯楽でした。当時の銀幕スターは中村錦之助さん、大川橋蔵さん、市川雷蔵さん、勝新太郎さん。そんな偉大な方々の時代劇を見ていました。ですから、こんなバタ臭い自分が(数々の作品に)出られるようになったのも、おふくろのおかげかもしれませんね」
実は草刈は昨年2月、北九州市の市制55周年アンバサダーに就任している。その任命イベントで、「最近は『ふるさとに帰りたい』とよく考えます」と郷土愛を熱弁。『朝日新聞』の取材でもこう語っている。
「17歳で上京し、2年くらいしてお袋を呼び、(北九州には)縁がなくなりまして、もう帰ることはないのかなと思っていました。ただ、50代半ばを過ぎたころから、今、どうなっているのかな、と無性に恋しくなりました」
この数年、Uターンを考える人口は着実に増えている。特にシニア世代のUターン相談件数は同世代の30%を占めると語るのは、認定NPO法人ふるさと回帰支援センター理事長の高橋公さんだ。
「特に北九州市は有楽町に移住相談コーナー・北九州市東京事務所を開設したり、ここ4年ぐらい力を入れていると聞いています」
実際、今年発売された移住ガイド本『田舎暮らしの本』(宝島社)で発表された「住みたい田舎ランキング」で、北九州市は人口10万人以上の都市が対象の全4部門のうち「総合」「シニア世代」の2部門で全国1位に。“安心して老後を暮らせる街”として定評のある北九州市。現在66歳の草刈が故郷へのUターンに引かれるのは当然のことなのだろう。
「事実、Uターン、Iターンした有名人は少なくありません。おすぎさんと中澤裕子さんは福岡、柳葉敏郎さんは秋田、本上まなみさんは京都、パパイヤ鈴木さんは沖縄。皆さん、東京での仕事が入れば上京する生活スタイルです。これだけ出演作が相次いでいる人気者の草刈さんがすぐにUターンすることはないと断言できます。ただ、将来の人生の選択肢のひとつとして魅力的な場所なのは間違いないでしょう」(芸能関係者)
“故郷に錦を!”草刈の郷土愛は年々、深まっている――。