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「これ、ネタだよね?」

 

先日放送された「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)での番組内容が気持ち悪いわ怖すぎるわで、男女どちらからも話題を呼んでいます。

 

主人公はパンサー尾形貴弘さん(42)。17年に結婚したという妻・あいちゃんへの嫉妬心が凄いとして、実際どの程度凄いのかをドッキリ検証したものです。そこでは妻が好きな有名人として、キックボクサーの武尊さん(27)がホームパーティーに登場。妻と急接近し、それをみた尾形さんがどう反応するかというものでした。

 

「そういうの嫌いなの、分かってるでしょ?」
「格闘家ってのは性欲の塊!」
「俺じゃダメなの? 乗り換えようとしてる?」

 

楽しそうに話す妻を見て、キレかける尾形さん。言葉遣いや自分勝手な振る舞いに、多くの人がドン引きしてしまったようです。人間だれしも嫉妬心は湧き出るものですが、それに振り回されるかは本人の心次第です。軽度のものならスパイスにもなると言われていますが、果たして家庭生活においての嫉妬心は、どのように作用するか考えてみましょう。

 

■嫉妬心はモラハラの一種

 

尾形さんの振る舞いを見て多くの人が感じたのは「モラハラじゃん!」という、精神的なDVです。一方的な嫉妬心とは相手に「信用されていないんだ」という傷を植え付け、さらにグイグイと心の境界線を侵食していくような行為です。

 

そもそも嫉妬心は誰にでもあるものですが、その感情に引っ張られて表に表すかを選択しているのは本人です。尾形さんのように言葉や態度として出して良いと思っているということは、相手の心の境界線内にグイグイ入っていって良いと無意識で思っていることにほかなりません。

 

よくモラハラの典型として「お前は本当にダメな奴だ」「そんなことも知らないなんて人としてどうかと思う」といった主観的な人格否定があげられます。これらも構図的には、主観的な意見を相手の心の境界線より内側に投げつけているにほかなりません。

 

嫉妬心を表に出すとき「あなたを愛しているから」なんて枕詞をつけると印象としては和らぎますが、ご紹介したようにモラハラと構図は同じ。相手の心の境界線に立ち入り、そして意見を押し付けている行為。それは嫉妬だろうがアドバイスだろうが、すべて相手のためにはなっていないのです。

 

■嫉妬心を放つことで、相手に選択権を委ねている

 

また相手をコントロールしようとして嫉妬していても、実はそれは自分の選択権を放棄していることにもなります。「お前がコレをするから耐えられない」という嫉妬心を出した側は、「状況を改善させる力があるのは命令された側にある」と宣言しているも同じです。

 

命令する側(嫉妬をする側)は自分の感情を爆発させているから立場が楽かと思いきや、「相手の対処によって気持ちを変化させる」ということを選択し続けている。そのため、一生信頼や安心感を自分では手に入れられない危険性をはらんでいるのです。

 

嫉妬の裏側には依存がある。依存という感情の中には、相手への期待が詰まっている。そんな状態では本来あるはずの“愛”なんて自分も感じられないし、相手にも伝わらないですよね。

 

■相手の「受け入れる」という選択は悪化の未来しかない

 

嫉妬むき出しでも関係が保たれているというカップルやご夫婦は、当然聞く側(今回であればあいちゃん)がその嫉妬心を受け入れているからこそ成り立っています。それならバランスが取れていて家庭生活も安泰かと思いきや、受け入れている側にもいつか限界が来ます。なぜなら、人は信頼されていない人を信頼し続けるのは無理だからです。

 

「お前を俺は信用していない。でも俺を信用してくれ」

 

こんなことを言うパートナーと、あなたは一生を歩むことができるでしょうか。

 

恋愛や結婚初期などは愛情があれば、「そんなアナタでも信頼する」と向き合うことができる人もいるでしょう。しかし3年5年10年と叶わなければ、一方的に信頼という愛を注ぐことに疲れるのは明白。「嫉妬心も愛情のうち」なんて言いますが、軽度であれ重度であれ仕組みを分解すると良いことはないのです。

 

嫉妬心は生きていれば浮かんでくることもあるモノです。だからこそそこに引っ張られず自分の中で手放して処理し、ブレない心を持ちつづけることが大切です。

 

ちなみに稀に嫉妬心を抱かないという真逆の人にも出会います。この場合は対人関係による心のバランス崩壊を恐れ、相手との距離を異常に遠くに設定していたりします。そう考えると人間の心の癖って、奥深いですね。

 

尾形さんの行動は“やらせ”であって欲しいものですが、円満な家庭生活を目指すなら嫉妬心は抱いてもイイコトなし。早くあんなおかしな嫉妬まみれの状態から、抜け出せることを願いたいものです。

 

文・イラスト:おおしまりえ

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