気心の知れた仲間たちと夕食を終え、帰路へ。つかの間の休息のようだ。 画像を見る

蒸し暑い夏の夜、かたせ梨乃(62)は東京都港区内の有名レストランを訪れていた。男女5人ほどのグループで食卓を囲み、ディナーのひとときを楽しんでいた。かたせといえば代表作『極道の妻たち』をはじめ、映画やドラマで女優として幅広く活躍。最近ではバラエティ番組でも明るいキャラクターで親しまれている。

 

「実はかたせさんは長らく、高齢のご両親を介護しているんです。ようやく最近になって、その実体験を公に話されるようになったんです」(テレビ局関係者)

 

彼女は6月3日放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)で、今年93歳の両親の介護を初めて明かした。父親は一時は“要介護5”に認定され、母親も骨折したりと、93歳の両親の世話をかたせは一人で背負ってきたという。

 

「かたせさんのお母さんが80歳のころ、足が弱くなったため、ご両親はそれまで暮らした一軒家からマンションに引っ越したそうです。その後、お父さんが倒れて入院し、歩行も食べることも困難になったそうです。そんなお父さんの入院中にお母さんの認知症が進み、かたせさんはこの時期がいちばん大変だったと聞いています」(前出・テレビ局関係者)

 

兄弟姉妹のいない一人っ子で、独身のかたせは昨今、日本で増えている“シングル介護”の典型例でもある。父はその後、懸命のリハビリとかたせの支えもあって“要介護1”まで改善。退院後、彼女は90歳を過ぎた両親を引き続き在宅介護しようと最後まで考えたというが――。今月発売された雑誌で1~2年前の“家族の決断”をこう振り返っている。

 

《両親と私、お互いのために「人の力を借りることも大切」と、二人いっしょに有料老人ホームでお世話になることを決めました。私はひとりっ子なので、両親の携帯がつながらなければ、すぐに駆けつけたい。でも、仕事も忙しい。当時は「たとえ5分でも10分でも」と毎日、病院の父、自宅の母に会いに行きましたが、とても大変な日々でした》(『終活読本ソナエ2019年夏号』)

 

「株式会社ねこの手」代表で、介護コンサルタントの伊藤亜紀さんは“シングル介護”の重責をこう代弁する。

 

「相談できる兄弟姉妹がいるというのは、やはり大きなメリットです。介護の労力や経済的な負担など、なんでも一人で抱えないといけないのがつらいところです。体も精神も追い詰められてくるんです。ですから、兄弟がいない場合、相談できる話し相手がいることが大変重要なんです」

 

かたせには三十年来のなんでも“相談できる相手”がいるという。

 

「彼女は映画『極道の妻たち』(86年)で共演して以来、岩下志麻さん(78)とはなんでも話し合う仲。お互い、よくメールしているようです。近年は岩下さんも旦那さんの介護をするようになって、2人の話題に“家族の介護”が増えているといいます」(映画関係者)

 

『極妻』では姉妹を演じた2人。実生活でもかたせは岩下を姉のように慕っているという。

 

本誌は岩下の“介護生活”を今年5月に報じている。今年に入って、夫の映画監督・篠田正浩さん(88)が体調を崩し自宅療養に入ったため、女優業をセーブして夫を支えているのだ。前出・伊藤さんによれば、こうしたかたせと岩下のような関係を“ケア友”と言い、その大切さをこう力説する。

 

「本当の兄弟姉妹同士だと利害や価値観がぶつかったりして、トラブルになることも。その点、利害関係がない“ケア友”は相談相手としては最適だと思います。しかも、女優という仕事も共通なので分かち合えることも多いはず。似たような境遇の人であればより的確な助言もできます。価値観が近い“ケア友”がいるのは、大変素晴らしいことです」

 

“ケア友”岩下との共闘で、かたせは“シングル介護”生活を前向きに乗り切っている。

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