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Amazon Prime Videoによる恋愛リアリティ番組「バチェラー・ジャパン」の口コミが、連日のようにSNSを賑わせている。“若者の恋愛離れ”が進んでいると言われる今、なぜ恋愛リアリティ番組がバズるのか。著書『恋愛しない若者たち』などで知られ、“草食系男子”の言葉を世に広めたトレンドマーケター・牛窪恵さんに話を聞いた。

 

■現実ではありえないマッチングだからこそ物語として楽しめる

 

「婚活世代と言われる20代後半~30代の人々は、恋愛に憧れていないわけではないんです。むしろ2004年の『セカチュー(世界の中心で、愛を叫ぶ)』ブームなどを経験し、“現実にはありえない純愛を物語として楽しみたい”という願望を強く持っている世代なんです」

 

そんな婚活世代にとって、『バチェラー・ジャパン』の何が刺さるのか。牛窪さんはこう語る。

 

「『バチェラー・ジャパン』は、実社会では非常に珍しい“ミスマッチ(格差)”な男女が短期間で恋愛をするという点で、現代の純愛物語と言えるんです。シーズン3は特に参加女性のバラエティーが豊か。看護師やぶどう農家の女性が会社経営者の王子様的な男性と出会って、リムジンやヘリコプターでデートをして、突然結婚するという“普通ではありえない非日常的な展開”が繰り広げられます。そんな自分の身に起こらないことだからこそ、“ちょっとだけ覗いてみたい”という願望を満たしてくれるんです」

 

■恋愛リアリティ番組は「テレビで観て感情移入」から「スマホで見下ろし観戦」するものへ

 

『バチェラー』が日本に上陸する前も、『あいのり』や『テラスハウス』などの恋愛リアリティ番組は地上波で人気を集めていた。視聴環境がテレビからスマホへと変わったことで、視聴者の楽しみ方はどのように変化したのか。牛窪さんはこう語る。

 

「地上波で放送されていた恋愛リアリティ番組は、放送時間に合わせて視聴者がテレビ画面の前で待機して観るもの。視聴者は“見たい”という強い動機を持っているので、参加者に感情移入をしやすい状況です。一方でAmazon Prime Videoのようなビデオ・オン・デマンドの番組は視聴者が自分にとって都合のいい時間にスマホを手に持ち、文字通り上から目線で観られます。テレビと違い、競技場でみんなが戦っているのを観戦するような、第三者的な感覚と言えます」

 

■バチェラーに見る恋愛感の変遷と現代の婚活観

 

恋愛リアリティ番組の歴史は、男女の恋愛観の変遷をも浮き彫りにする。牛窪さんは過去のヒット番組と『バチェラー・ジャパン』の比較から、男女のパワーバランスの変化を見出す。

 

「1975年から1984年まで放送されていた『ラブアタック!』や1987年から1994年まで放送されていた『ねるとん紅鯨団』は、“男性が女性を巡って競い合う”という当時の世相を反映したような構成でした。女性がトロフィー的存在である一方で、男性側には“トライすることがカッコいい”というような強い男性像を求める風潮があったわけです。ですが、バブル崩壊後の1999年から2009年まで放送された『あいのり』や2012年から2014年にテレビ放映された『テラスハウス』では、男女が共同生活を送って恋愛を育んでいくように。つまり、男女の関係が対等になっていくんです。そして2017年に配信が始まった『バチェラー・ジャパン』では、女性が競い合って結婚を勝ち取る。一見すると男性が結婚相手を選んでいるように見えますが、裏を返せば受け身。視聴している男性の視聴者からは“こういう風に女の子から来てくれたらいいな……”という声を聞きます。そんな“女性が積極的に選ぶ”という展開が、今の恋愛離れ世代の男子にもマッチしているのです」

 

“恋愛離れ”が叫ばれる時代だからこそのヒットの理由があるようだ。

マーケティングライター、世代・トレンド評論家

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