「偶然だとは思いますが、移動する列車の中に閉じ込められて、次第に主人公たちが追い込まれていくという物語は、コロナが蔓延している今の世の中と似ています。時代が呼び寄せた作品といえるかもしれません」
こう分析するのはアニメ評論家の氷川竜介氏。公開初日の全国での上映回数が異例の約7千700回を記録するなど、社会現象を巻き起こしている『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』。
鬼に両親を殺された主人公・竈門炭治郎が鬼化した妹を救うために闘うという本作。ダークな筋書きにもかかわらず、ヒットした背景を氷川氏はこう語る。
「鬼滅はとにかく声優の一体感がすごいです。観客が感情移入しやすいのはそれだけ役に入れ込んでいるからです。演技のうまさは人を共鳴させる力があります」
その立役者の一人が炭治郎役を演じている声優の花江夏樹(29)。あるアニメ誌のライターは花江の魅力についてこう力説する。
「花江さんの声はあどけなさと力強さが同居する根っからの“主人公声”です。炭治郎はまさに花江さんのハマり役。また演技力が高く、脇役まで演じ分けることもできるオールラウンダーです。また趣味のゲーム配信が中心のYouTubeチャンネルの登録者数は174万人で、声優界では1位です」
中性的な見た目で優しげな雰囲気だが、意外にも幼少期はガキ大将キャラでケンカに明け暮れていたという花江。そんな花江の人生を変えたのが、アニメとの出会いであった。