クランクアップ後の昨年12月初め、田中監督は春馬さんに会っている。これが、監督が目にする最後の春馬さんの姿となった。
「アフレコのために撮影所に来てもらったんです。クランクアップしてから久々に会いました。そのときもすごく明るくて。“申し訳ないけど、ラストシーンの大勢の前で演説するところ、ちょっとだけアフレコしたい”とお願いして、その部分の編集した映像を見てもらったんです。
そのときに“あれ?”って思ったら、春馬くんが涙を拭いているんですよ。“監督、俺、このときほんとに一生懸命やったから、なんか感動して涙出てきちゃった”って。僕は“頑張ってくれたよなぁ”って声をかけたんですが、それが彼に映画を見てもらう最後になるとは思いませんでしたね」
映画が最終的に完成したのは3月初め。すでに新型コロナウイルスの感染が拡大しており、試写もなかなかできない状況だった。春馬さんは、完成作品を見ることなく、7月に天国へ行ってしまった。
「映画を見てもらって飯を食いながら話をしたかった。残念です」
春馬さんにかけたい言葉はーー。
「とにかくできあがった作品を見てくれ、と言いたいですね。この映画の芝居をやっているとき、彼は充実していたと思うから、きっと映画を見たら満足してくれると思う。いままで見られなかった、彼自身すら気が付かなかった三浦春馬が、スクリーンのなかで生き生きと生きていると思っています」
「女性自身」2020年12月15日号 掲載