■妻・和枝さんと散歩ルートのヒマラヤスギを見上げて…
そんな田村さんが健康のために欠かさなかった日課が散歩。本誌もその姿を何度か目撃している。ゆっくりとした足取りで1時間ほどかけて歩き、時おり立ち止まっては公園の花々を慈愛に満ちた表情で眺める姿が印象的だった。
しかし、今年に入ってからそのルーティンに驚きの変化が。散歩ルートに面する一軒家に住む近隣住民はいう。
「田村さんはいつも決まって一人で散歩していたのですが、今年に入ってからは和枝さんと一緒に歩くようになったんです。つかず離れずの距離感で、奥さんの話を田村さんが笑顔で聞いていましたね」
別の近隣住民はこう証言する。
「緑地公園の前で立ち止まって、田村さんが奥さんに草木の説明をしているようでした。2人でヒマラヤスギを感慨深そうに見上げていました」
田村さんにとって、地元の緑は“宝物”だった。
「20年ほど前、別の公園を潰して高層マンションを建てるという計画に対して、地元住民を中心に反対運動が起こったんです。自宅前に緑の旗を立てるのが反対の印だったのですが、田村さんも『少しでも役に立てるなら』と協力して旗を立てていました」(前出・知人)
“他人に私生活は見せない”という美学を破ってまで、和枝さんとの“最後のデート”を楽しんだ田村さん。それは50年以上にわたって連れ添った妻への田村さん流の恩返しだった。
「田村さんは恐らく自分がもう長くないことを悟っていたのだと思います。夫、父として家族を守るために、田村さんはこれまでは役者としてのイメージを優先した生活を送ってきました。しかし、“最後くらい妻と堂々とデートしてみよう”という思いがあったのではないでしょうか」(前出・知人)
’19年に記者が「和枝さんと楽しい時間を過ごすことが今の生きがいですか?」と尋ねた際、田村さんはほほ笑みながら「うん」と返答していた。田村さんと和枝さんが見上げていたヒマラヤスギの花言葉は、“あなたのために生きる”。
死が2人を分かつとも、互いのために生きた2人の“誓い”は永遠に続くことだろうーー。