住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代に夢中になったドラマの話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’80年代”を振り返ってみましょうー。
■ベタで過激……その影響は今も脈々と
「たとえば美人でもお金持ちでもない、どちらかといえば不遇な主人公が、運命的に結ばれない“ナニか”がある王子様と恋に落ち、さらに意地悪なライバルが出現。しかも憎たらしいほどの敵役が、最終回で実はいい人だったり、友人になったりするーー。そんな、王道の少女漫画にあるような“ベタ”なストーリーを、過剰なセリフと演出で表現した“大映ドラマ”は、’80年代のテレビ界を彩りました」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(54)。
テレビ局ではなく、テレビ制作会社の「大映テレビ」の名前が前面に出て、それが人々の記憶に強烈に残るほど、同社が制作したドラマはヒットを連発した。
「’70年代の山口百恵さん主演の『赤いシリーズ』(’74~’80年・TBS系)も話題を集めましたが、’80年代に入ってからも『スチュワーデス物語』(’83~’84年)、『スクール☆ウォーズ』(’84~’85年・ともにTBS系)など代表作が多数あり、堀ちえみさんや小泉今日子さんら人気絶頂のアイドルも主演を務めました。『この薄汚えシンデレラ!』『恋は壊れやすいのよ』など、日常では絶対に使わないような名ゼリフ、オーバーアクションな演技なども特徴で、学校でのモノマネのネタにもなったほどです」
荒唐無稽な展開でありながら、ドラマ冒頭には「この物語は……」というドキュメンタリータッチのナレーションが差し込まれ、妙なリアリティを感じさせる部分もあった。
「まさか事実なんてことはないはずだけど、でもドラマを十分の一ぐらいに薄めた物語なら、身近で現実に起きるかもーー。そんな錯覚を起こす瞬間もありました」
個性的な大映ドラマのもう一つの特徴は、テーマ曲。
「『スチュワーデス物語』は映画『フラッシュダンス』(’83年)の主題歌『ホワット・ア・フィーリング』を、『スクール☆ウォーズ』は映画『フットルース』(’84年)の挿入歌『ヒーロー』を、ともに麻倉未稀さんがカバーするなど、洋楽のカバー曲を取り入れ、番組からヒット曲を生み出したことも斬新だったといえるでしょう」
とにかく、見れば“これは大映ドラマだ”とすぐにわかるほど、個性が強かった。
「過剰な演出やセリフ回し、ストーリー展開などは、『冬のソナタ』を代表とする初期の韓流ドラマ、そして『半沢直樹』にも影響を与えたのではないかと思われます」
【PROFILE】
牛窪恵
’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍