住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、ブームになった映画の話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’80年代”を振り返ってみましょうーー。
■映画が友達と“遊び”に行く選択肢に
「映画『セーラー服と機関銃』(’81年)の、薬師丸ひろ子さんが機関銃を撃ちまくる象徴的なシーンでは、映像がスローモーションになるとともに『カイ……カン』の名ゼリフが。インパクトのあるCMがお茶の間で流れ、薬師丸さんの歌手デビューを飾ったタイトル曲は、街中で何度もリフレインされました」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(54)。
『セーラー服と機関銃』では、ひょんなことからヤクザの親分となってしまった薬師丸演じる女子高生が、トラブルに巻き込まれつつも、情に厚い年上の子分たちとともに奮闘する姿が描かれている。
機関銃のアクションシーンを撮影した際、割れたガラスの破片が顔に飛んできて、薬師丸はけがをしてしまったという。シングルレコードのジャケットに写る薬師丸の頬に赤い傷がついているのは、このときのケガをメークで再現したものともいわれている。
「当時はまず歌手デビューし、人気が出た後に主演映画が作られるアイドルが多かったのですが、薬師丸さんは、『角川映画』の3作目となる『野性の証明』(’78年)のオーディションを勝ち抜き、いきなり映画女優としてデビューしました。大スクリーンで映える、その目力の強さが注目されたのかもしれません」
映画出演2作目の『翔んだカップル』(’80年)は、鶴見辰吾との初主演作。この作品で初メガホンを取った相米慎二監督が、赤川次郎氏の原作にほれ込み、自ら企画を持ち込んだのが『セーラー服と機関銃』だといわれている。
「若者を中心に大ヒットしました。それまで“親に連れられて見に行く”ものだった映画が、『セーラー服と機関銃』以降、中学生でも“友達同士で見に行く”ものになり、帰りにマクドナルドなどで感想を語り合う休日を過ごす若者が増えました。若年層が映画館に足を運ぶようになるきっかけとなった作品なのではないでしょうか」
その後も、薬師丸は『探偵物語』(’83年)、『Wの悲劇』(’84年)と主演作が立て続けにヒット。
「原田知世さん主演の『時をかける少女』(’83年)、渡辺典子さん主演の『晴れ、ときどき殺人』(’84年)がヒットする道筋を作ったのです。薬師丸さん、原田さん、渡辺さんは“角川三人娘”と呼ばれ、『角川映画』の黄金期を支えました」
「角川映画」が40周年を迎えた’16年、橋本環奈主演で続編の『セーラー服と機関銃ー卒業ー』が公開。次世代にも受け継がれた。
【PROFILE】
牛窪恵
’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍