■笑いのニューウェーブのつもりが、原点回帰に?
BPOの見解には「気持ちの良い笑いが脳を活性化させてリラクゼーション効果をもたらし、ストレスを解放して、円滑な人間関係にもつながることは多くの人が実感するところである」とも綴られている。しかし、痛みを伴う笑いに対する受け取り方は人それぞれであるため“快か不快か”は判別することが難しいといえる。では、本多氏の考える“気持ちの良い笑い”とは何だろうか?
「人を傷つけない、嘲笑しない。そういう笑いですね。阪神巨人さんの漫才に人を傷つけるような類のものはありませんし、それより前の夢路いとし・喜味こいし先生や中田ダイマル・ラケット先生の漫才にも人を嘲笑うような笑いはほとんどありません。
古い漫才だけではありませんよ。ミルクボーイの漫才は誰を傷つけることなく面白い。しかも、世代問わずみんなが笑える。にもかかわらず、 一部の“お笑い”には人を攻撃したり侮辱するような方法で勝負しようとするものがいまだに多くあります。
ミルクボーイが、叩くことも動き回ったりすることもせずに、決まりきった形であれだけ笑わせることができるのは、ネタ作りがしっかりしているからです。他の芸人たちもそこを目指してほしいですし、そのためには先人の漫才などを見て勉強する必要があるでしょうね」
実は本多氏によると“気持ちの良い笑い”の萌芽は、若い芸人たちの間で少しずつ産まれているというのだ。そして、不思議な潮流も生まれているのだそう。
「今のNSCの若い子達は『どこにもない新しい笑いだ』といって、ネタを作ってきます。そのなかに、一昔前のいとしこいし先生やダイマルラケット先生がやっていた手法に近いものを見かける機会が近年増えましたね。『50年前にダイラケ先生や、いとこい先生がやってたよー』と言うと、本人たちはビックリしています(笑)。
ある意味、原点回帰みたいな現象が自然に今、起こっているのかもしれません。『BPOの見解に関係なく、お笑いが自然にいい方向へと流れて行っているのかな?』とちょっと安心もしています」