■認知症の母親は孫たちの音楽や出演作品を楽しみに――
また、娘・静河らの協力は原田にとって大きな支えとなったそう。
「コロナ禍前、美枝子さんはヒサ子さんの面会によく子供たちも連れていきました。3人が介護に協力的なことに感謝していましたね。ヒサ子さんは美枝子さんとともに、孫である優河さんの音楽を聴いたり、静河さんの出演作を見る時間が大好きだったそうです」(前出・原田家の知人)
家族での“共闘介護”や映画製作を通して、ヒサ子さんとの新たな思い出を作った原田。しかし――。
「実はヒサ子さんは1年ほど前に亡くなったんです。安らかな最期だったと聞いています」(前出・原田家の知人)
映画の公開から1年余りでヒサ子さんを看取った原田――。「株式会社ねこの手」代表で介護コンサルタントの伊藤亜記さんは「映画製作はヒサ子さんにとっても、残されたご家族にとってもプラスになっているはず」と語り、こう続ける。
「介護される側にとって“目的を持つ”ということは、とても大事なこと。『15歳から女優をやっている』と言われても普通の人なら『何言っているの?』となるところを、原田さんは“女優になるという目的”を与える機会にしました。人間は、目的を持つことで生きる気力が湧いてくる生き物。お母様は最期まで前向きに、人生を駆け抜けたのではないでしょうか。
また記録に残したことで、孫世代に“親を育てた人の生きた過程”をつないでいくことができます。お互いに心残りなく人生の幕を閉じることが介護の理想であり、本当の親孝行だと思います。ご本人からご家族へ、そしてご家族からご本人への“最後のギフト”のように感じます」
『ちむどんどん』で“東京の母”となる前に、最愛の母と離別していた原田。房子役は家族の絆を再確認したうえでの熱演なのだろう。また、ヒサ子さんが新たにつないだ縁もあった。
「9月に公開予定の映画『百花』で原田さんは菅田将暉さんとW主演を務めます。原田さんは菅田さん演じる息子を女手一つで育て上げた、認知症の母を演じたのです。このキャスティングは『女優 原田ヒサ子』が契機となりオファーされたものだそうです。すでに撮影は終了しており、原田さんは“魂を込めて作った作品になった”と感極まっていました」(映画関係者)
原田、そして大河にも出演した静河らの活躍をヒサ子さんは天国から笑顔で見守っているはずだ。