■「自分の人生に悔いはない。幸せでした」
コンサートは昼と夜の2部制で、葛城さんは体調を考慮して当初昼の部にだけ参加する予定だった。だが、「もう一度ステージに上がりたい」と急きょ夜の部にも登場し、トークコーナーだけ参加した。
「そのとき『自分の人生に悔いはない。幸せでした!』と言い切ってくれたんです。その言葉に、周りは本当に救われましたね。ユキさんは、ステージではロックをガンガン歌うカッコいい女性でした。いっぽう、楽屋では別人。いつでも優しくてチャーミングな方でした」(桑江)
同じく友人の石井明美(56)も、こんなエピソードを明かす。
「『足は開いていないほうが絶対に格好いいから』と、ステージの立ち方など、プロとしてあるべき姿をよく教えていただきました。一方で、ユキさんはみんなと共演するとき、朝早くに起きて、おすしを振る舞ってくれたんです。夜中にお米をといでいたんですって。尋常じゃない量のゆで卵を用意してくれたり……。唯一無二の声を持ったロッカーでありながら、かつ常に周囲を温かい雰囲気にしてくれる方でしたね」
ロザンナは改めてこう振り返る。
「ユキさんはかわいいんだけど、すごく強くて。でも弱さも備えていて。すべてを持った人でした。全部自分で段取りをつけて去っていくなんて。なかなか、そうできる人はいません。誰に対しても思いやりの塊のような人でした」
ロザンナ、桑江、石井は密葬で、葛城さんへの感謝を示すべくメッセージカードを棺に納めたという。1年2カ月もの闘病生活を経て、動じることなく天へ飛び立った葛城さん。そのカーテンコールに、万雷の拍手が鳴りやまないーー。