■「みんな、わざわざゆたぼんの話なんてしませんよ」
’19年5月、「琉球新報」のインタビューで「夢は子どもだけが乗れるピースボートで世界中に友達をつくり、戦争をなくすこと」と語っているゆたぼん。
しかし、成人を迎えるまであと4年ということに触れつつ、Aさんは「目標達成の頃には、自分が子供じゃなくなっている可能性が高い」といい、ゆたぼんが少年革命家を自称していることについても疑問を呈する。
「ゆたぼんが、どんなものを“革命”と指しているのかが曖昧です。不登校になってYouTubeで発信していることが革命なのか、それとも今後革命を起こすのか。教育制度を改革したいのか、不登校児のために新しい道を作りたいのか。革命のためのロードマップもよくわかりません」
さらに、Aさんは“革命の厳しい現状”を指摘する。
「あくまで私の学校の話ですが、ゆたぼんの話をしている生徒を見たことがありません。ゲームやメディアなど、楽しい話題がありますからね。それに教員のなかでも、ゆたぼんの話になったことがありません。またYouTubeの世界を覗いても、ゆたぼんに感化された、同じような不登校児を見かけるわけでもありません。
つまり、ゆたぼんの存在によって、教育に何か影響が出ているのかというと“全然ない”ということです。あくまで学校側は、先生も生徒もゆたぼんのことを“不登校という肩書でYouTuberをやっている子”というくらいにしか認識していないと思います。
革命に本気で取り組んでいるのなら、教育業界からも様々な反応があるかもしれません。ただ、これまでも発明王のトーマス・エジソンなど学校に行かなかった偉人がいましたが、学校制度が揺らいだことは一度もありません」
■このままではアンチと触れ合っているだけ
そして、Aさんは「影響力が極めて小さい上に、ただアンチが増えているだけ。何かを変えようと思うなら、そして何かメッセージがあるのなら、賛同者を増やす必要があります」という。
「賛同者を増やすには、合意形成の仕方が肝心になります。相手と話し合うためには、話し方や伝え方を工夫することが重要です。自分の意見を理解してもらうように周りに伝える。そして周りの意見を踏まえながら、落としどころを探すということです。伝え方によって、相手の受け取り方も変わりますから。
ただYouTubeやSNSを見ている限りですが、『学校に行ってロボットになるな!』など、ゆたぼんは一方的に強い言葉で自分の主張をするだけです。合意形成の経験があまりないのかなと思いますし、周りに自分の考えを受け入れてもらうための練習も受けていないのかなと思います。だから、賛同者が増えないという現状があるのではないでしょうか」
その上で、Aさんはこう話す。
「革命を起こした歴史上の人物は基本的にインテリです。なぜかというと、彼らは学校に行っていたのである程度の教養があり、合意形成することができ、そうして人脈を作っていきました。そのため理論武装した上で、人を使って勝負することができたんです。
いっぽうゆたぼんは、どうでしょうか。このままでは“楽しくアンチと触れ合っているだけ”で終わってしまうのでは。一人の教育者として、そのことを危惧しています」
最後に、Aさんはゆたぼんの“良いところ”を挙げてエールを送った。
「ゆたぼんには積極性があります。さきほども話したように、不登校児には無気力だったり不安を抱えていたりする子が多い。家で何もしないまま一日が終わるというケースも見られます。
ですが、ゆたぼんは『学校に行く必要はない!』といい、積極的に行動に移しています。その積極性はいいことだと思います。その特徴を活かして、頑張ってほしいと思います」