■「ブルーライトカットに特化しているのであれば、ミストローションは青色のはず」
ところで、Wi-Fiやブルーライトは化粧品で防げるものなのだろうか?
「そもそもWi-Fiをカットすると、パソコンやスマホの使用に支障が出るのではないでしょうか。ゆうこすさんの化粧水を愛用している方の周囲でパソコンやスマホが使用できなくなる事態が頻発していれば、すでに社会問題になっているはずだと思います。現実的ではないですよね。ブルーライトについては、例えば一流の皮膚科系医学雑誌に載っている論文は、『もし可視光線をカットするとしたら、色が着いた日焼け止めでないと効果がない』と言っています(参考文献11)。ゆうこすさんのミストローションは無色透明ですので、ブルーライトカットできるとは理解し難いですね」
やさひふ氏は続ける。
「例えば、りんごは太陽などの光の中で、赤い色をよく跳ね返します。赤い光が反射されやすいからこそ、人間はりんごを見て赤いと思うわけですよね(参考文献12)。もし、ゆうこすさんのミストローションがブルーライトカットに特化しているのであれば、ブルーライト(青い光)を反射するので、その化粧品が青く見えなければおかしいはず。逆に、青い光を吸収して閉じ込めるのであれば、青が反射されないので青以外の黄色のような色に見えるでしょう。
可視光線の光を吸収・反射するスキンケア製品であれば何らかの色が着いてしまうはずなので、“着色された日焼け止めで可視光線カット効果も期待できる”という商品が出てくるのはあり得るでしょう。しかし、“無色透明のミストローションでブルーライトカットが可能”というのは、世紀の大発見レベルで、物理学の歴史が大きく変わると思います」
化粧品の効果を喧伝するインフルエンサーがSNSやYouTube上にあふれている昨今。一見すると、有名人たちが勧める商品は効果がありそうにも思える。だが、やさひふ氏はこう警鐘を鳴らす。
「SNSやYouTube上でバズっている皮膚科系のコンテンツは、間違った情報の方が多いというのは明らかになっています。しかも、間違っている情報を多く発信しているインフルエンサーの方が、ウケがいいのかフォロワーが増える傾向にもあります。目に見えない身近なものに対して、インフルエンサーが不安を煽るというのはよくある手法。
ゆうこすさんの例に照らせば、いまやほとんどの人がWi-Fiを使っていることもあり、『Wi-Fiは危険』と言われたら不安に思う人は当然いるでしょう。それに、100人に1人引っかかるだけでも結構な需要が生まれるわけですよね。インフルエンサーが危険性を信じ込ませた後に、『でも大丈夫。私のこの特別な製品を使えば問題ないよ』と売り込むまでがセットです。若い人たちがそういった宣伝に騙されてしまうのは良くないと思い、Twitterで情報発信しました」
それでは、インフルエンサーが紹介する化粧品を購入する場合は、どのような点に注意すればよいだろうか?
「ヘルスリテラシーの初歩ではありますが、まずは情報のソースを確認しましょう。つまり『インフルエンサーが言っているから』というだけでは、情報のソースとしては非常に弱いわけです。例えば、WHOやアメリカ皮膚科学会などの公的機関が何と言っているのかを調べてみる、あるいはエビデンスの裏付けとなる臨床試験の有無なども確認すると良いでしょう。また、『このインフルエンサーは金儲け目的ではないだろうか』と疑うことも大事な目線です。なにか客観的な裏付けがないのであれば、購入する判断を一旦保留にするのがよいでしょう」
どれだけ魅力的に映る化粧品でも、まずは情報を見極めることが大切なようだ。
【参考文献】
1. 環境省. 第1章 放射線の基礎知識 1.3 放射線 放射線の種類.(閲覧日2022-12-9)
2. American Academy of Dermatology. Sunscreen FAQs.(閲覧日2022-12-9)
3. Ghiasvand R, et al. Sunscreen Use and Subsequent Melanoma Risk: A Population-Based Cohort Study. J Clin Oncol. 2016; 34: 3976-83.
4. Iannacone MR, et al. Effects of sunscreen on skin cancer and photoaging. Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2014; 30: 55-61.
5. Hughes MC, et al. Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013; 158: 781-90.
6. 電磁界情報センター. WHOファクトシートNo.304「基地局および無線技術」(日本語訳).(閲覧日2022-12-9)
7. Arjmandi N, et al.Can Light Emitted from Smartphone Screens and Taking Selfies Cause Premature Aging and Wrinkles? J Biomed Phys Eng. 2018; 8: 447-452.
8. Chamayou-Robert C, et al. Blue light induces DNA damage in normal human skin keratinocytes. Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2022; 38: 69-75.
9. Christensen T, et al. Violet-blue light exposure of the skin: is there need for protection? Photochem Photobiol Sci. 2021; 20: 615-625.
10. 森脇 真一. 可視光線の功罪. 日皮会誌. 2020; 130: 2043-2046.
11. Geisler AN, et al. Visible light. Part II: Photoprotection against visible and ultraviolet light. J Am Acad Dermatol. 2021; 84: 1233-1244.
12. 中島 弘一. 光と色と色覚. 化学と教育. 2017; 65: 22-27.
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やさひふ氏が編集長を務める「ルメディア」
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