■「多くの人が納得するような一芸を持たないと難しい」
次に井上氏は、ファンとそれ以外の視聴者との“温度差”を指摘する。
「コムドットのような“地元ノリ”のグループのファンの人たちには、『自分たちが育てたYouTuber』といった意識が強くあるでしょう。そういったファンは親しみを持っていると思いますが、コムドットに思い入れがない人からすればさほど興味が湧きませんよね。ファンがついてきている時は、“ぬるま湯”で活動しているような感じだと思います。ですが、そこで一皮むけておかないと、ファン以外の人を取り込むのは難しいでしょう」
加えて、プロの進出が増えたことも影響しているようだ。
「いまはプロの芸人たちも、高いクオリティで動画配信を始めています。そうするとYouTuberの企画では、敵わない部分も出てくるでしょう。彼らは面白いだけでなく、ちゃんとオチをつけて、基本的には誰も傷つけないようにしています。でもYouTuberは時々、誰かを傷つけてしまうような発言で炎上していますよね。そういうところで差がついてしまい、『安心して見てられない』と感じる視聴者が増えているように思います。『素人だから面白い』という風潮はもう終わって、『やっぱりプロだよね』という風に潮目が変わってきたのではないでしょうか」
では、盛り返すためにはどのようなことが求められるだろうか?
「多くの人が『これは敵わないな』と、納得するような一芸を持たないと難しいと思います。見た目や雰囲気、企画だけではいずれ行き詰ってしまい、飽きられてしまうでしょう。私がテレビに出演してきた経験から申しますと、芸人やタレントさんたちは基本的に能力が高い人が多い。かなり反応が速かったり、驚くぐらい高く飛べたり、何かしらの芸を持っているんですね。私自身、感心させられることがよくありました」
07年6月に日本語版サービスが開始されたYouTube。以後、職業としてYouTuberを選択する人たちが台頭したが、脚光を浴びる時期は過ぎてしまったという。
「YouTuberへのボーナスタイムが切れてしまったように思います。『いまはYouTuberの時代だね』と特別視され、多少のツメの甘さも見逃してもらっていた期間は終わりました。いまや、芸能人や様々なジャンルの専門家もチャンネルを持つようになり、プロとも比べられてしまう世界になっています」
最後に、井上氏はこう指摘する。
「新陳代謝が激しい世界ですので、どんな制作者も時代や視聴者の好みの変化を嗅ぎとって、やり方を変えていかないといけなかったと思います。当初の成功モデルで大きな収益もあったと思いますし、スタイルを変えなかった、あるいは先取りをしてこなかったツケがきているように感じます。キャッチアップして追いかけていくのか、それとも諦めるのかといった大きな岐路に立っているYouTuberは多いでしょう」
“冬の時代”を乗り越え、返り咲くYouTuberは果たしてーー。