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日本が世界に誇るクリエイターの庵野秀明(62)。現在、脚本と監督を務めた実写映画『シン・仮面ライダー』が公開中だが、その撮影現場の様子が物議を醸している。

 

発端となったのは、3月31日にNHK BSプレミアムで公開されたドキュメンタリー『ドキュメント「シン・仮面ライダー」 ~ヒーローアクション挑戦の舞台裏~』(以下、『ドキュメント「シン・仮面ライダー」』)。同作の制作が発表された2021年4月から約2年間にわたって制作現場に密着したものだ。

 

※本原稿では、同ドキュメンタリー番組の番組内容に触れています。

 

幼少期から触れたアニメや特撮作品への膨大な知識量と強い愛情を持ち、作品づくりに並々ならぬこだわりを持つことで知られる庵野氏。それゆえファンからの信頼も厚く、これまで手掛けた2015年の『シン・ゴジラ』は82.5億円、21年の『シン・エヴァンゲリオン』は102.8億円の興行収入を記録するなど、大ヒットを連発している。

 

当時小学5年生だった1971年に放送された特撮ドラマ『仮面ライダー』の虜になり、高校時代には同作のパロディ自主製作映画を製作するほど熱狂的なファンの庵野氏だけに、自らリブートを手掛ける『シン・仮面ライダー』に注ぐ情熱も相当なもの。『ドキュメント「シン・仮面ライダー」』でも、キャラクター造形の打ち合わせ時から細かく要望を伝える様子が映されていた。

 

当然、俳優陣の演技にも細かく指示を伝えるかと思いきや……。出演者の森山未來(38)の提案で、クランクイン前に主演の池松壮亮(32)、柄本佑(36)といった3人の俳優陣で演技のすり合わせを行うことに。

 

会議冒頭、クランクインと同時に「よーいドン」で撮影に入ることを懸念した森山が「劇画調でやるのか、リアルな感じでやるのかということをシェアした方がいいことを監督と一緒に話しながらできたらと」と提案。しかし、庵野は何も言葉を発さず、沈黙に耐えかねた森山は「これ俺ら3人で決めるの? 違うよね……」とボソリ。

 

すると、庵野はこう応答する。

 

「僕の方から『こうして欲しい』というのはまず出ない。自分のイメージを押しつけるならアニメーションの方がいい。実写のときは真逆でいきたい。『自分のイメージからできるだけ離れたもの』を撮りたい。僕の方から最初にイメージを出すことは、実写においてはまずない。あとは役者次第」

 

この発言に森山は苦笑し、池松と柄本は神妙な面持ちをしていた。

 

『シン・仮面ライダー』において、俳優陣に加えてもう一つの要となるのがアクションだ。庵野氏も打ち合わせの中で「仮面ライダーの基本はアクション」と語るだけあって、入念な準備が行われていく。

 

ついにクランクインを迎えアクションシーンの撮影もスタート。しかし、庵野氏はアクションシーンが“段取りをこなしている”と感じ、ワイヤーアクションを使わない方針に変更することに。

 

そして、あるアクションシーンが行き詰まると、スタッフやアクション監督の田渕景也氏らを集め、庵野氏が「ショッカーの皆さんに気概がない。申し訳ないけど、見ていると動きが流れている」と注文。

 

庵野氏からダメ出しをもらった田渕氏だが、密着カメラに対して、こう本音を吐露していた。

 

「『段取りに見えたくない』と言われて、やっぱり難しいですよ。単純に顔が見えれば、みんなすごい顔をしているわけですよ、戦っている時に。(中略)僕が思う『カッコいい』と(庵野監督の)感覚が違うんだなと。ただ、負けたくないとこもあるんで、そこはそこでこれからどんどん戦っていこうかなと」

 

しかし、別の日のアクションシーンもまたうまくいかず、庵野氏を除いたスタッフらで緊急会議が行われることに。その中であるスタッフは「現場に行って初めて宿題がわかる感じ」と困り顔で話し、田渕氏も「結局変わっちゃうから。これから先は現場で言われたままやるか」と語っていた。

 

さらに、庵野氏が急きょ予定にないアクションシーンを追加した場面では、日没迫るなか池松が大急ぎで追加アクションを覚えることに。なんとか撮影することができ、庵野氏から一発OKが出たものの、その映像をスマートフォンで確認した池松は「どうせやり直しでしょ?」と疲れた様子で言い放っていた。

 

『ドキュメント「シン・仮面ライダー」』を見た映画ライターは言う。

 

「池松さんは『やり直しでしょ』と言ったシーンについて、その後、密着班に対して現場の雰囲気が悪かったと困惑していたことを吐露しながらも、最終的には庵野氏の求めている“生っぽさ”に理解を示していました。

 

このようにドキュメンタリーに収められた現場での庵野さんは、リアルに見えることにこだわり、俳優やスタッフにNOを突きつけるものの、どうしたらOKかということや具体的なアイデアをほとんど言いません。『シン・仮面ライダー』には『エヴァンゲリオン』シリーズなどで一緒に仕事をしてきた“側近スタッフ”もいますが、田渕さんのように初めて仕事をする実写映画畑の人も多数いました。田渕さんも番組の中で、一時は台本を捨てて現場から引き上げることを考えるほど追い詰められていたと明かしていますし、スタッフたちも庵野さんのやり方に困惑していた様子でした」

 

それでも、庵野氏の強いこだわりによって生まれた『シン・ゴジラ』が80億円を超える興行収入を叩き出したことも事実。『シン・仮面ライダー』も同じように報われるかと思いきや……。

 

「庵野さんの『シンシリーズ』はこれまで全て週間興収ランキングで初登場1位を記録し、大ヒットしてきた実績があります。しかし、『シン・仮面ライダー』は公開1週目でまさかの2位スタートとなり、翌週には5位にまで転落。しかも、往年の『仮面ライダー』ファンからは概ね評判なのですが、オタクではない映画ファンから“アクションシーンが何をやってるかわからない”“CGがチープ”といった酷評する声も多く、評判が芳しいとは言えません。現場も疲弊した挙げ句、興行収入も不調となると、庵野さんへの“ヒットメーカー”の立場が危うくなる可能性もあるでしょう」(映画関係者)

 

2021年7月、「61歳になったので、エヴァではなく実写作品の映画を何本か作りたいと思っています」と実写映画に意欲を示していた庵野氏。次作の前に、“シン庵野”になる必要があるのかも?

出典元:

WEB女性自身

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