住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう!わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、大流行したアイテムの話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’90年代”を振り返ってみましょう――。
「『飲み会があっても、楽しめない』『外回り中も、会社に見張られているようだ』と、昭和世代のおじさんたちにとってはストレスでしかなかったポケベル。ところが’90年代に入り、状況は一変します。もともとビジネスツールであったポケベルを、女子高生たちが友人とのコミュニケーションツールとして使い始め、’95年には契約数が1000万人を突破しました。東京テレメッセージの新規契約者の大半が女子高校生だったというデータもあります」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(55)。このように’90年代に入ると、世の中のブームの多くは女子高生たちが牽引していくようになった。
「当時の若者の流行発信地は109を中心とした渋谷で、ガングロやルーズソックス、プリクラ、カラオケボックスなどがはやりました。なかでもポケベルは、学校側も苦慮するほど。学校の休み時間には、彼氏や友達のポケベルにメッセージを送ろうと公衆電話の前に行列ができるため、送信完了に必要な『♯』のボタンを押せなくする学校もあったそうです」
■仲間内だけのオリジナルの暗号作りも
女子高生をターゲットにした、カラフルなペンタイプのおしゃれなポケベルも登場した。
ドラマ『ポケベルが鳴らなくて』(’93年・日本テレビ系)では、不倫関係にある男女の連絡手段として、ポケベルが演出に使われた。
「それまで、友人同士のやりとりは固定電話が基本。異性の家にかけるとき、親が出て気まずい思いをした人も多いはずですが、ポケベルの登場で、こっそりメッセージを送れるようになりました」
初期のポケベルは、かけてほしい電話番号を入力するタイプだったが、女子高生たちは電話番号の代わりに、語呂合わせ的に数字を組み合わせて意思疎通を図る手法を身につけていった。
「『0833』で『おやすみ』、『428』で『渋谷』、『14106』で『愛してる』などが一般的。さらに仲間内でしか理解できないようなオリジナルの暗号を作ったりもしていました」
文字やハートマークなどを送ることができる機能を持った進化版も登場した。
「文字だけでは気持ちが伝わらないことから、ハートマークは有効でした。こうした機能が重要視され、のちのiモードで絵文字が誕生したといわれています」
隆盛をきわめたポケベルも、’90年代後半にはPHSの登場で急速に衰退。’19年、すべてのポケベルサービスが終了したのだった。
【PROFILE】
牛窪恵
’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍