9月7日、東山紀之(56)の新社長就任も発表されたジャニーズ事務所による会見。会場となった名門ホテル「パレスホテル東京」は、出版関係者の間では、故・瀬戸内寂聴さんが“東京の定宿”としていたホテルとしても知られている。
かつて東山紀之が、寂聴さんと対談をするために京都・寂庵を訪れたのは、’12年1月のことだった。
《寂聴 ようこそ寂庵へ! 嵯峨野の奥まで、よくいらしてくださいました。
東山 実は萩原(健一)さんと何度もドラマでご一緒させていただいて、そのたびに寂聴さんのお話を伺っていたので、一度お会いしたいな、と思っておりました》(本誌’12年2月28日号)
当時、東山は45歳。第1子となる長女は2カ月前に誕生したばかり。対談での話題は、東山の生い立ち、共通の知人である萩原健一さん(享年68)や森光子さん(享年92)との交流、『源氏物語』……と、多岐にわたったが、その間に寂聴さんが繰り返し口にしていたことがあった。それは、「もっと悪人になりなさい」「悪いこともしなさい」といったことだった。
自他共に認める“対談の名手”だった寂聴さん。だが東山は生来の真面目さからか、44歳も年上の“人生の先輩”との初対面に緊張していたのか、なかなかリラックスした様子を見せなかった。
そんな彼に足りないものとして寂聴さんが指摘したのが、“マイナスの経験もプラスにする考え方”だったのだ。寂聴さんは東山にこんなアドバイスをーー。
「あなたは今までだって普通の人よりずっと華やかな人生を送ってきて、それに無限の才能も持っています。でも、私からみるとそれがまだ7割も出ていないような気がして、何かもったいない、と思います。
あなたの人生はこれからが本当の盛りです。マイナスをプラスにする前向きの考え方をこれからも忘れないで、もっともっと芸を大きくしてください。ショーケンと同じことをする必要はありませんが、ちょっと“不良”もしてほしいですね。そうすれば、あなたはもっと大きな人物になります」
寂聴さんの真情が通じたのだろう、東山は辞去する際、歯を見せて、こう語ったのだ。
「悪くなるように勧めていただいたことも含めて、今日は今の僕に必要なことをたくさん教えていただいた気がします」
それから11年、危機にある会社を背負っていくために、さらに“大きくなること”を求められている東山。寂聴さんの期待に応えることはできるのか。