10月16日にYouTubeで公開されたリアリティ番組『令和の虎』で、志願者との面接中に、ジャガー横田(62)の夫で医師の木下博勝氏(55)が途中退席をする騒動があり、木下氏の振る舞いに称賛が集まっている。
『令和の虎』は出資を受けて起業したい志願者が事業計画をプレゼンテーションし、投資家らが審査して出資の可否を判断するという、2000年代前半に日本テレビ系で放送された『マネーの虎』のYouTube版。
今回話題となったのは「『医者としてここには居られない』虎が退室する理由とは。美味しいローカーボで心身共に健康な世界を実現したい」というタイトルの動画で、志願者はインフルエンサーを名乗る41歳の女性。父親の闘病をきっかけにローカーボ(低糖質)の食の普及活動のためYouTube等でインフルエンサー活動を始め、「“おいしいローカーボ”という新しい食生活を広めることで、心身ともに健康な世界を実現させる」ことを目指しているという。
女性は、現代人の生活習慣は糖質過多であり、食生活を改善させるために、ローカーボの普及活動として「ローカーボグルメフェス」を開催したいと希望。8年前に糖尿病を患い、「半年後には人工透析」と宣告された志願者の父親が、糖質制限食を推奨する医師の食事指導により、薬が不要になるところまで回復したとのエピソードを披露した。
医師の立場として意見を求められた木下氏は「どこからどう言ったらいいかと思うんですが」と前置きし、「僕らが普段している心療、治療の考え方とは全然違うことで。糖尿病の治療っていうのは、現在は糖尿病の治療ガイドラインっていうのがありますので、それに基づいて普通医師は行うんですけど……」と、困惑ぎみに発言するも、女性は、近年は医師の間でも糖質制限の考えが普及してきていると反論。
すると木下氏は「僕が一人で言うとなんか元も子もなくなっちゃうんですけど、基本カロリー制限が糖尿病の治療原則だと思うんですね。なのに糖質だけ制限するっていうのは、エビデンスは僕はないと思うんですけど、(女性の話は)糖質を制限されるのがカロリー制限になるんじゃないかなと思うんですけど」と解釈を伝える。
これに対して、女性は「糖質制限におきましては、カロリー制限は推進しておりません。同時にカロリーを制限してしまうと、フラフラしてしまったり栄養不足になってしまうので、脂質とかをきちんととって、カロリーはきちんと摂りましょうって言うのが基本です」と説明。
木下氏は「仰ってることはよくわかるし、お父さんがよくなられたこともすごくいいなと思うんですけど、一般論でないってことは当然世界中で研究しているし、治療もガイドラインってのがあるぐらいで、なんでそれが前面に出ていないのかってことをお考えになっているのかなと」と女性を気遣った上で、こう疑問を呈した。
「僕らからすると、たまたまそれでうまくいっている人がいるかもしれないけど、(治療法が)スタンダードでないってことはスタンダードでない理由があるんですよ。病院でそんな風に勧めることはまずないですよ。それはなんでだと思いますか? (医師たちが)ただ知らないだけだと思いますか?」
それに女性は「いえ、私の地元の総合病院でも、最近は糖尿病のお医者さんが勧めてるよって話も聞いておりますので、だいぶ変わってきたかなとは思っておりますけど」と再び反論。
それに対し、木下氏も「まあ、僕が知る限りゼロですね。そういう特異な治療をされてる感じは、マニアックな方はそういうのを信じるかもしれないけど、僕としてはちょっとやめてほしいんですね、そういうことは。医師の立場としてはそういう立場ですね。こんなこと言うと元も子もないんだけども」と一蹴した。
「糖質制限による糖尿病の治療で治った人がいた」という女性の経験談について、出演者から「たまたまか」を問われると、木下氏は「信じる人は勝手に信じてください、ですね」と言い切った。
さらに「糖質制限がきっかけじゃない?」のという問いには、「可能性はゼロじゃないと思いますよ。医学に100%はないですけど、これを観た人がこれを信じて、頑張って結局は悪化するとか悪くなるということがあっては絶対いけないと思うから、僕は医師の立場として言ってるんですよ」と問題点を指摘し、「エビデンスがないものを人に勧めるなんていうのは、絶対にいけないです。だから僕はこれ、退出しなきゃいけないと思ってます。これ以上ここにいたら、僕は賛成してる立場に思われてしまうから。すいませんけど、退出してもいいでしょうか?」と退室の許可を求めた。
別の出演者からローカーボのデメリットについて問われると、木下氏は「僕は栄養学のプロじゃないので知りません」とした上で「考え方としては別にいいと思いますよ」とローカーボ自体は否定しなかったものの、「でも『これをやると糖尿病が治る』とかね、そう誤解をさせてはいけないと思うんですよ。全員が全員これでうまくいくなんて到底思えないです」と、効果を謳うことの危険性を強調し、糖尿病の治療法としてキッパリ否定した。
別の出演者に、今回のビジネスプランの対象は糖尿病患者だけなのかを問われた女性が「私は医者ではないので、ローカーボを始めて、周りの方の健康状態が改善したことがすごく多かったので、現代、糖質が過多な生活がすごく多いので、それの改善ということで今回来させていただいて」と話すと、木下氏は「全くもって賛同できないので、退出させてください」と女性の話を遮って、そのまま退室した。
医師としてキッパリ言い切り、エビデンスを重視する姿勢を見せた木下氏。その対応にネット上では称賛の嵐となった。
《「エビデンスのないものは推奨できない」木下先生の医師としての確固たる信念と自信に圧倒的に賛同します》
《木下先生の言うことは、凄いよくわかる。民間療法で悪化したし、亡くなった方もいるから、退室は仕方ないよね》
《同業者ですが、木下先生意外とちゃんとしていて見直しました。健康に関わることを、半端な知識で世間に広めようとするのはやはりまずいと思います》
《この民間療法が良いか悪いかが論点ではなく、立場的に推奨してると思われかねない事はできない!!!と、お医者様の立場意見を通す先生は素敵だし信用できるなと思いました》
《木下先生は実際に命に向き合って仕事をしているためにこのような絶対的根拠が無い志願者の意見を少しでも世の中に間違った方向に広めてしまう恐怖があったのかと思います。 木下先生の退出に賛成です》