■国籍なんて、僕にとってはどうでもいいことだ。
その店では、もうひとつの出会いがあった。僕と同じディーラーをしていた女性との出会いだ。
彼女のことは、以前、スポーツ新聞にも書かれたことがある。『8歳年上の金髪美女と結婚!』なんて見出しが躍っていたっけ。
僕には、当時、金髪の女性の知り合いすらいなかったというのにね。
ロスへレコーディングに行くときに、記者に成田で話しかけられた。変なことを聞いてくるなと思ったけれど、それほど気にしなかった。そうしたら「金髪美女と結婚」って書かれていた。ロスでその新聞を見たけど、おかしくって笑っちゃったよ。
彼女は白人女性じゃない。国籍は韓国だった。でも、国籍なんて、僕にとってはどうでもいいことだ。
それに、国籍がどうのこうのということ自体がバカバカしいことだと、僕は思う。僕は何も気にしていなかった。
愛があって、一緒にいて、ふとした仕草を見たときに「好き」って思うことがある。「好き」というのは形を変える。でも、いつも前提には愛がある。それでいいんじゃないかなと思うんだ。
籍を入れたのは、彼女のほうから、
「籍を入れたい」
と言ってきたからだった。僕は、
「いいけど、僕は何も変わらないよ」
と、言ったんだ。
「婚姻届を出したことで安心したとしても、それは意味のないことだよ」
籍なんて、ただの紙の問題だと、僕は思う。でも、彼女は証明のようなものを欲しがっていたようだった。
でも、最後はそれが2人にとって、負担になってしまった気がする。
結婚したから、こうしなきゃいけないとか、そういう決まりみたいな考えが、逆に2人をギクシャクさせたのかもしれない。
熱狂的なファンが、家の前で待っていたりするのも、彼女にとってストレスの原因の一つになっていた。いやがらせもあった。自宅へいたずら電話がかかってくる。
いたずら電話は、ずっと鳴りっぱなしだった。
そんな状況のなかで、彼女はだんだん家にいられなくなっていった。最後は、ノイローゼ状態になって、
「別れたほうがいいね」
という話になったんだ。
もちろんファンのいやがらせだけが、別れた理由ではないけれど、彼女には、いつもいろんなプレッシャーがつきまとっていたんだと思う。
結婚していた時期は、短かったね。
僕はもう、結婚はしない。籍を入れることがあるとしたら、それは僕が死ぬ時だと思う。
死ぬ直前に、最後まで一緒にいてくれた相手が籍を入れておきたいと言うのなら、2人で共に生きた証しとして、入籍するかもしれない。
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『自白』刊行から20年、今回刊行された『自白II』では波瀾万丈のアーティスト人生を歩んできた彼が50歳となった今、20年の沈黙を破って後半生を振り返っている。遺書を20通書いた活動休止期間の苦闘、主演映画『翔んで埼玉』の舞台裏、個人71連勝中のバラエティ番組『芸能人格付けチェック!』の葛藤、先輩アーティストたちとの華麗なる交流録、実業家として億単位の負債、最後の恋など仕事と私生活を自ら明かしている。
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