最大震度7を記録した能登半島地震。1月1日の午後4時10分ごろに地震が発生すると大津波警報が発令され、日本海沿岸の石川県珠洲市や七尾市などの各地で津波が観測された。4日午前10時現在で78名の死亡が確認され、同日午前11時時点で51名の安否がわかっていない。
新年早々に発生した大災害によって、日本中が不安に包まれたなか、その対応に賞賛の声が集まったテレビ局が。それは、兵庫県を主な放送対象地域とする「サンテレビジョン(以下・サンテレビ)」だ。本社は神戸市に位置する。地震発生当時、兵庫県北部にも津波警報が発令されたが、サンテレビは事前収録していた映像を使用して、多言語で避難を呼びかけたのだ。
映像では、津波警報の発令された地域を図で示していた。そしてアナウンサーが日本語で「兵庫県内に津波警報が出ました。命を守るため、今すぐ逃げてください。できる限り、高いところに逃げてください」と言うと、同内容を伝える手話と日本語字幕が。それに続いて英語、韓国語、中国語、ベトナム語、ネパール語、タガログ語、ポルトガル語と、7言語の話者が避難を呼びかけた。また話者は、紙に書いたそれぞれの言語でも避難を呼びかけており、耳が聞こえない人にも伝わるようになっている。
さまざまな国にルーツを持つ人たちのために、事前に準備していた動画で津波警報を伝えたサンテレビ。その用意周到さに、X上では賞賛の声が相次いだ。
《サンテレビすごい、手書きのテロップを各言語のネイティブが読み上げて避難を呼びかけてる。音が聞こえない人もこれは助かるのでは?》
《サンテレビが、不安を煽らず、事前撮影したネパール語・タガログ語・ベトナム語・ポルトガル語などで、津波警戒と避難案内を淡々と放送してて、感心しまくってる》
《これを被災直後に原稿準備して多言語で収録するのは大変なので、予め作っておくというのは素晴らしい対応ですね》
そこで、本誌はサンテレビにこの取り組みを行った経緯について話を聞いた。すると広報担当者は、「弊社は阪神淡路大震災の被災局です」といい、こう続けた。
「神戸市長田区には、さまざまな国籍のMCをたくさん抱えていらっしゃるFM局があります。その局は阪神淡路大震災の当時、多言語で情報を提供していました。神戸は国際都市で、たくさんの国の方々がお住まいです。そこで、『ラジオだけでなくテレビでも必要な対策だ』と考え、映像を用意していました」(以下・カッコ内は広報担当者)
この映像が収録されたのは、1年ほど前のことだという。
「弊社は’21年に新社屋に移転しまして、放送機器が緊急対応しやすくなりました。これまでは機器が複雑だったため、緊急放送に切り替えるには技術を持った人が必要で、それほど多くない人数で運営している弊社にとって困難を伴うこともありました。
ですが、移転の際に『災害に強い社屋に』というテーマがありましたので、比較的わかりやすい操作で緊急対応できるようシステムが変わりました。そこで津波警報用の映像を作成し、昨年の春頃にやっと完成しました。
今では『備えがあって、本当に良かった』と思います。今後、反省点や『もっとこうしたほうが良いな』という改善点が出てきた場合、内容を更新していていけたらと考えております」
そして、広報担当者は「私自身としては、Xでの皆さんの『とても良かった』というご意見は拝見させていただいております」と明かした。
誰も取り残さない避難放送の裏には、過去の大震災の教訓があったのだ。