2月2日、来春のNHK連続テレビ小説『あんぱん』のヒロインを今田美桜(26)が務めることが発表された。
彼女が演じるヒロインのモデルは小松暢さん。『アンパンマン』作者のやなせたかしさん(享年94)の妻だ。もともと高知新聞の同僚として出会ったふたり。結婚後、暢さんはやなせさんを支え続けた。
2002年、やなせさんは本誌の「シリーズ人間」というインタビューページに登場し、妻について語っていた。
《漫画家としてひとりだちを目指すやなせさんを暢さんはこう励ました。「なんとかなるわ。収入がなければ私が働いて食べさせるから」》
《限界まで働くやなせさんを支え続けたのが暢さんだった。「仕事以外はすべてカミさんに頼っていた。散髪も彼女にしてもらったし、病気になると全力で看病してくれた」(たかしさん)》
’88年にアニメ化された『アンパンマン』が大ヒット。70歳前後にして大きな成功をつかんだ夫に満足したかのように、‘93年11月に暢さんは75歳で逝去した。
■「死にたくねぇよ。おもしろいところへ来たのに」
アンパンマンの大ヒット後も、精力的に活動を続けたやなせさん。多くの人が忘れられないシーンがある。2013年6月、94歳のやなせさんがアニメのスタッフと面会したときの様子が映像に残され、テレビで放送されている。
自分の孫以上に若いスタッフもいるなか、やなせさんはこう語り出した。
「来年までに俺は死ぬんだよね。朝起きるたびに、少しずつ体が衰弱していくのが分かるんだよね」
戸惑うスタッフを前に、やなせさんは絞り出すように言った。
「まだ死にたくねぇよ。おもしろいところへ来たのに。俺はなんで死ななくちゃいけないんだよ」
それから約4カ月後の10月13日にやなせさんは亡くなった。最後まで、作品作りを楽しみ、多くの人を喜ばせることに力を尽くしていた人生だった。そんなやなせさんと、妻の暢さんをモデルにした朝ドラは、どんな作品になるのだろうか。