「みなさん、どうもありがとうございます。みなさん、本当にどうもありがとう。私が選んだ結論、とてもわがままな生き方だと思いながら、押し通してしまいます。8年間、一緒に歩いてきたみなさんが『幸せに』って、そう言ってくれる言葉がいちばんうれしくて。
みなさんの心を裏切らないように精いっぱいさりげなく生きていきたいと思います。いま、みなさんに『ありがとう』っていう言葉をどれだけ重ねても、私の気持ちには追いつけないと思います。本当に、私のわがままを許してくれて、ありがとう。幸せになります」
1980年10月5日、歌手の山口百恵さんは日本武道館で行われた「山口百恵ファイナルコンサート」で、こう語ったのちラストソング『さよならの向う側』を歌い、マイクを静かに置いた。
1973年にオーディション番組「スター誕生」に出場したことをきっかけにして、歌手デビューした百恵さん。1970年代から1980年代にかけて日本の音楽シーンを席巻し、彼女の楽曲は44年が経った今も多くの人々に愛されている。そこで、本誌は60代以上の男女300人を対象に、「一番好きな山口百恵さんの楽曲」を調査した。
第3位に選ばれたのは、『ひと夏の経験』。1974年にリリースされ、阿木燿子が作詞、宇崎竜童が作曲を担当したこの曲は、若者の恋愛をテーマにしたポップナンバーで軽快なリズムとキャッチーなメロディーが特徴だ。
「青春時代を思い出す」「夏の思い出とリンクする」というファン多数。特に若い頃の甘酸っぱい思い出と結びつけてこの曲を好む人が多いようだ。
《小学生ながら興奮した》
《妄想膨らませてドキドキして聞いてました》
《山口百恵の曲は、懐かしくもあり、ひと夏の経験は、あの頃、大人向けの曲に路線変更した頃で、そと意味でもこの曲がターニングポイントだった様な気がする為》
《当時学生だった我々は,大人と少女の間の魅力にあふれているレコードの歌声とジャケットの写真にとりこになっていた》
第2位に選ばれたのは1977年にリリースされた『秋桜』。作詞・作曲を担当したのはさだまさしで、母と娘の関係を描いた感動的なバラード。結婚を控えた娘の心情を繊細に表現した同曲で、百恵さんは第19回日本レコード大賞の歌唱賞を受賞している。
アンケートでは「母親への感謝の気持ちが自然と湧いてくる」「結婚式で流したい曲」といった意見が多く、特に親子の絆を感じさせる歌詞が多くの共感を呼んでいるようだ。
《さだまさしの曲で母の事を思い出す》
《嫁ぐ前の心情が、痛いほど理解出来る》
《私が結婚する前日に、友人とカラオケに行き友人が歌ってくれたのを今でも覚えています。結婚してもホームシックになったりするとこの歌を口ずさんだりしていました》
そして第1位に選ばれたのは、’78年にリリースされた『いい日旅立ち』。作詞・作曲は谷村新司が手掛けている。
当時、日本国有鉄道が行っていた旅行誘致キャンペーンソングとして制作された同楽曲。累計売上は100万枚を超え、大ヒットとなった。悲しい現実に胸を痛めながらも、旅に出て新たな人生を模索しようとする歌詞と、郷愁を誘うメロディーに多くの人が共感を覚えたようだ。
アンケートでは「人生の節目に聴くと勇気をもらえる」「歌詞に込められたメッセージが心に響く」といったコメントが寄せられている。特に、《いい日旅立ちは色々な人に未来が待っているように思われるので好きです》《一人身で上京して就職したときによく聞いていた》と、人生の新たなスタートを切る際にこの曲を聴くことで、前向きな気持ちになれるという声が多く見られた。
《自分が中学生ぐらいの時に聞いて、旅行を推奨していた当時の国鉄のコマーシャルでもこの曲を聞いた。夢を与える歌だと思った》
《結婚して、子供が生まれ、保育園に入り、地元で頑張ろうと思っていた途端、急に転勤になり、電車の中で、この歌を聞いたのが思い出になりました》
《旅が好きなのでよく聞いていた。年月が経ちトワイライトエキスプレスで北海道へ行くために乗車した際に、列車の車内アナウンスの前にこの曲が流れていたのを思い出しました》
聴く人の人生の背景に溶け込み、感情を揺さぶる百恵さんの楽曲。アンケートに寄せられた回答からは、これらが単なる懐メロではなく、今もなお多くの人々の心に深く刻まれていることが伺えた。百恵さんの楽曲は、時代を超えて愛され続ける普遍的な魅力を持っていると言えるだろう。