終戦直後、夫・次郎(中島歩)が病死して途方に暮れるヒロイン・のぶ(今田美桜)。幼なじみの嵩(北村匠海)は最愛の夫を失った彼女を常に気遣っていた。そして物語の舞台は高知新報へ――。
『アンパンマン』の生みの親・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルとして描き大反響の連続テレビ小説『あんぱん』。本誌は前半3カ月の名シーン秘話を徹底リサーチ。その舞台裏を一挙公開!
■クランクイン初日からヒロインに先駆け現場入りした大物俳優
クランクインは昨年9月。やなせさんの故郷・高知県香美市を流れる物部川周辺の撮影だった。
「初日は、のぶと嵩の幼少期を演じた永瀬ゆずなさん、木村優来さんの出演シーンがメインでした。2日目から今田さん、北村さんが現場入り。のぶを演じるお2人の“最初のシーン”はともに朝ドラヒロイン恒例の疾走場面でした。
また、初日には草吉役の阿部サダヲさんの釣りシーンの撮影もありました。『こころ』から22年ぶりの朝ドラ出演ということもあり感慨深い様子でしたね。撮影の合間には『脚本家の中園ミホさんから唯一、言われたのが“面白くしてください”という注文だったんだよ』などと話して、現場を盛り上げていました」(制作関係者)
■「御免与駅」ロケ地は栃木県
のぶと父・結太郎(加瀬亮)の最後の別れの場となったのが「御免与駅」。旅立つ結太郎は駅の改札を入る直前に自らかぶっていた帽子をのぶにかぶせて乗車し、そのまま戻ってくることはなかった。「御免与駅」は東京高等芸術学校に合格した嵩が上京するシーンなどにも登場している。直近では嵩とのぶがこの駅ですれ違うシーンも描かれた。NHK関係者は言う。
「やなせさんの故郷・高知県内に本当にあるのは『後免駅』で、やなせさんも利用したそうです。この『後免駅』をモデルとして、今作の“別れと出会いの場”となっているのが『御免与駅』です。実はこの『御免与駅』の撮影は高知県内ではなく、栃木県日光市小代にある東武日光線の旧下小代駅でおこなわれています」
本誌は東武鉄道にドラマの反響を聞いてみた。
「確かに旧下小代駅で撮影されています。ロケ地の“聖地巡礼”というのでしょうか、駅周辺を訪れる方も増えているようです。ただし、現在の『下小代駅』ではなく旧駅舎での撮影です。この旧駅舎は当社が現在、所有・管理しているわけではなく、個人所有になっていますので現状の詳しい状況は当社ではわかりかねます」
この旧駅舎は東武日光線が開業した1929年建造の木造駅舎。老朽化が問題となり、今から約20年前、東武鉄道は旧駅舎の取り壊しと新駅舎建設を発表。しかし駅近隣の住民から旧駅舎の取り壊し反対の声が上がった経緯がある。地元関係者は言う。
「解決策として両者が合意したのが移設保存でした。駅舎の建物は無償で反対派の住民へ所有権が移り、約40メートル離れた個人の所有地に移転されることになったのです。’07年に移設工事がおこなわれ、同時に新駅舎が誕生。’09年には旧駅舎が登録文化財に登録されました。旧駅舎は『栃木県フィルムコミッション』にも登録され、撮影にも利用されています」
ただし、マナーのよろしくない“聖地巡礼者”もいるようだ。
「朝ドラで脚光を浴びて、下小代駅周辺に観光客が増えたのはありがたいことですが、現在の旧駅舎は私有地です。それなのに断りなく勝手に敷地内に入る観光客もいて、所有者の方も困っているようなんです」(前出・地元関係者)
夏休みの『あんぱん』聖地巡礼の際は、どうぞご注意を――。
