[E:note]沖縄で最初デビューされて、東京にいらしたわけですが、沖縄という環境は自分の音楽に強い影響を与えたと思われますか。
多和田 はい。やっぱり町の中で沖縄の音楽が溢れているのもすごく大きくて、沖縄の歴史 とかもそうですが、音楽と深く関わりがあるような感じがするんです。例えば、学芸会とかで子供が戦争の劇をやるときに、沖縄の民謡だとか、そういう悲しみを歌った歌がすごく多いいんです。いま思うとそれもブルースにもつながったりとか。そういう人の心にグワッと染み込むような悲しみだとか、沖縄音楽のそういうところにすごく惹かれていたのかなと思いますね。
[E:note]東京に出てきて、実際にメジャーデビューするに当たって、何か苦労されたこととか、嬉しかったこととかってありますか。
多和田 東京に出て来て、初めての出来事もたくさんあって。ほんとに初めてだらけぐらいの勢いで、それによって戸惑いがあって。こういう時ってどうすればいいんだろうって考えたりなんかすることが多かったんです。でも、その中で出会った方々とか、音楽に携わっている方々が、どういう気持ちでというか、どういう風に音楽を作っていっているのかという現場が見えてきたんです。その中で、皆さんがほんとに心から「じゃあ、ああやってみよう、こうやってみよう、イエイ!」って、ほんとに楽しい! という気持で、音楽を感じながら作っているのを見たんです。ああ、やっぱり音楽って、ほんとに楽しむことなんだなって、改めてそのときに思って。自分が、あまりよくない意味で悩み過ぎたり、固定観念みたいな先入観とかも、クリアになったというか。「あっ、まずはほんとに音楽に身を任せることって大事なんだな」って。現場を見ることが出来てそういう気持にまた改めてなれたというのが、すごく幸せなことだなと思いましたね。
[E:note]デビューワンマンライブに、たくさんの観客が集まって、最後は握手もされて、自分の中での実感というか、ファンの方との距離が近くなったと感じられましたか?
多和田 そうですね。例えば日常生活でもそうなんですが、しゃべっているときに、最初は少し、急に「イエイ!」とかなれない距離感があるじゃないですか。でも、それを埋めるには会話が必要だったり、何かクッションみたいなのがあって、どんどん縮まっていきますよね。でも実際ステージとかでは、一人一人と何か「今日はどうですか?」とか会話は交わせないじゃないですか。でも、その代わりにその場の中に音楽というのがあって、それがすごい力があって、音楽というものがその力を持っていて…。なんか、その力は下手したら会話を飛び越せるぐらいで。お互いが音楽に無防備な瞬間があって、そうなったときに本当に、ずっといままで一緒に楽しく会話していた人たちぐらいの勢いで、距離が縮まるような感覚があるような気がしていて。自分もこれから、そういう空気というか、そういう空間を作っていけるような…そういう音楽の力もそうですけど、さらにそれを自分がリードできるようになりたいです。パフォーマーというか、エンターテイナーとしても、シンガーとしても、人間としても、そういう存在になりたいなと、また改めて思いましたね。