堀内賢雄 『三国志』オリジナルストーリーの朗読CDで諸葛孔明を熱演!
長きにわたって愛読されている『三国志』をもとに中国で制作され、現在、BSフジにて好評放送中のドラマ『三国志Three
Kingdoms』。その世界観を踏襲しつつ、人気の高い登場人物5人にスポットを当てた、オリジナルストーリーの公式朗読CDシリーズが発売された。中でも、ドラマの吹替えと、朗読CDの全編ナレーション両方で諸葛孔明を担当するのは、ベテランの堀内賢雄だ。
ほりうち・けんゆう★
7月30日生まれ、静岡県出身。声優活動30周年を迎える実力派。アニメ『機動戦士ガンダムZZ』(マシュマー)、『スイートプリキュア♪』(メフィスト)、海外ドラマ『フルハウス』(ジェシー・コクラン)などに出演。ナレーターとしても活躍中。
CD『三国志 Three Kingdoms公式朗読CD』シリーズ
通常版2,625円、特装版3,990円(ともに税込み)で、エスピーオーより発売中。
発売記念イベントが5月27日(日)、「さいたま市民会館おおみや」にて開催。
詳細はブラウニー(03-5302-2194)まで
――『三国志』は、世代を問わず昔から人気がある作品です。今回、お仕事を通じて、担当した諸葛孔明をどのような人物だと感じましたか?
「小さいころマンガで『三国志』を読んで、諸葛孔明という人間が好きになりました。何よりかっこいいですから。ただ、僕も声優の仕事を
続けるうち、だんだん『こういう役は自分にはできないな』と思うようになっていったんです。僕はどちらかというと、明るい男性の役が多いんですが、孔明は
クールで冷静だし、理系ともいえるような頭のよさがあるじゃないですか。戦略をパズルのように組み立てて、先を読んでいって……という。今回、依頼をいた
だいて、これほど(役が)できるかと悩んだのは、初めてかもしれません。たいへんなシーンで、自分のトーンを抑えたしゃべりはできるのか、とか。ですか
ら、全体的に抑え目の演技で孔明を演じました。もちろん楽しかったですけどね。それだけ彼のキャラクターは魅力的だし、人気がある理由が改めてわかりまし
た」
――クールな諸葛孔明に、自分の声のイメージは違うかもしれない、と最初は思われたんですね。
「人を魅了する力や話術を、うまく表現できるのかなと。声の世界って、台本をきれいに読めればいいというものではないんです。それが如
実に現れるのが、孔明のような役で。いかに説得力を感じて聞いてもらえるかという部分は不安でもありましたが、それがうまくできたときは、役者冥利につき
るなとも思いました」
――堀内さんは、『三国志』という物語の魅力はどこにあると思いますか?
「たくさんの武将たちが、領土を争って戦っていくわけですが、本人たちはその戦いを正しいと思っている。でも、志半ばで裏切られたりし
ていきます。その姿を見ると、ああ、人間って愚かだけど、せつなくて、かわいい存在だなって思ったりして。それは、いつの世も同じなんだなって。昔の話で
すが、現代社会にも通じますよね」
――声優というお仕事も、ほかの役者さんと同じように、監督やスタッフと話し合いながら役を作っていくんでしょうか?
「そうですね。(収録の)ブースの後ろに、演出家さんなどがいるんです。その人たちを納得させなければ、作品を世に出しても、みんなに
納得してもらえないと思っています。ですから今回も、最初は緊張しました。どの仕事も、監督のイメージにたどりつくまで、何回も繰り返すんです」
――堀内さんは声優歴30年のベテランですが、現在でも初めての仕事のときは緊張するんでしょうか?
「むしろ、若いときのほうが緊張しませんでしたね。キャリアを積めば積むほど、演技の怖さや深さがわかってきて、怖くなってきます。そ
れに、怒られて当たり前という年代は過ぎましたから。『ぜんぜんキャラをつかんでいないね』ということになると、ベテランとしては、やはり、ね」
――堀内さんは声優として長きにわたって一線で活躍されていますけど、その秘訣とはいったいなんですか?
「かつては声優は、滑舌がよくて、きれいにしゃべれれば成功だと思っていたんですけど、それは二の次だということがわかってきたんで
す。いかにして、人のハートに伝えられるかが大事。声優を目指す人たちの中には、いい声だから声優になりたいという人が多いと思うんですけど、むしろ逆な
んですよね。人と真剣にむきあったり、それで傷ついたり、いろんなことを経験して、何かを学ぶ。それこそ『三国志』と同じで、裏切られることも大事。うわ
べで表現せず、モノの本質をつかめる人になっていくといいんじゃないかと思いますね。今回の朗読CDを担当する5人も、みんな人気の声優さんですけど、い
い声を持っているだけではありません。持っている深いものがあります。何かが違います。だから、売れっ子なんです」
――普通に会話していて、まわりから声優さんと気づかれることはないですか? 今日、お話をうかがっていて、当然ですが、『いい声だなぁ』と思ってしまったんですけど(笑)。
「ときどき、コンビニで『この弁当温めてください』なんて言うと、『堀内賢雄さんですよね』って、言われたりしますよ。あとは飲み屋で
話していたら、後ろの女の子に『声優さんですよね?』って言われたり。普通に話していても、違うところから声を出しているので、分かる人はいますね」
――ずっと声の若さを保つために気をつけていらっしゃることって何かありますか?
「ぜんぜん。僕はタバコも吸いますし、お酒も飲みます。さっきも言ったように、いい声だけの人はいっぱいいるんです。『人間がしゃべっている声』というリアリティが必要なわけで。吹き替えの世界では、声がガラガラでもOKということもあるんでね」
――今までいろんな役を担当されてきて、いちばん印象に残っている役はどれですか?
「アメリカのドラマ『フルハウス』のジェシー・コクランですね。共演メンバーが楽しかったというのもありますけど、テーマが『家族』
だったんですよ。『こんな家族っていいな』っていうのを、作品を通じてすごく感じました。家族で問題が起きたとき、みんなで真剣に解決していこうと、暗く
なるんじゃくて、明るく盛り上げて解決していく。それがいちばん楽しかったです。『ビバヒル』(アメリカのドラマ『ビバリーヒルズ高校白書』及び『ビバ
リーヒルズ青春白書』)も楽しかったですね。僕の演じたスティーブは『そうでやんす』ってよく言うんですけど、あれはアドリブじゃなくて、台本どおりなん
です(笑)。こういう、二枚目半みたいな役が多かったので、今回の諸葛孔明は、すごいチャンスだったし、同時に正念場でもあったわけなんです」
――では最後に、この朗読CDの“堀内流”楽しみ方をぜひ、教えてください。
「耳に刺さらない、ささやくようなしゃべりで、とにかく癒されるような作りになっているので、寝る前にヘッドホンをつけて聴いていただければ。眠れないときがいちばん“効く”んじゃないかと。自分でも聴いていて、『あ、いい声だな』って思いますからね(笑)」