いまや社会現象といってもおかしくない、壇蜜人気。そんな彼女のブレークするきっかけとなったのは、初主演映画『私の奴隷になりなさい』だった。過激な描写が話題になったが、最新出演映画『甘い鞭』はより一層、刺激的な作品になっており、再び話題を呼びそうだ。
だんみつ☆
80年12月3日生まれ、秋田県出身。29歳のとき『SPA!』(扶桑社)にてグラビアデビュー。その後、数々の雑誌でグラビアを飾る。デビュー作『私の奴隷になりなさい』(12年)で映画初主演。
映画『甘い鞭』
監督・脚本/石井隆
9月21日~、丸の内TOEIほか全国ロードショー
©2013『甘い鞭』製作委員会
オフィシャルサイト/http://www.amai-muchi.jp/index.html
――原作と石井隆監督の脚本が少し違っているようですが、主人公・奈緒子の描かれ方も違っていたのでしょうか。壇蜜さんは、撮影前に原作をお読みになっていたということですが。
「原作のほうが、奈緒子の人生に救いというか、心の拠りどころとしているものがいくつかあったんですけれど、劇場版では、それがほとんどない状態になっています。奈緒子は、女医として信頼はされていながらも、孤立していて、頼るものがない。ひとりぼっちだということをものすごく感じました」
――激しい人生を送ってきた奈緒子を、すんなりと演じられましたか?
「いえ。まず、演じることに対して、どうアプローチしていってよいのか分からなかったです。そこで『演技する』という気持ちを捨てて、奈緒子の人生に寄り添う形で、映画に取り組もうと考えました」
――演技の経験があまり多くない状態で、ハードな内容の撮影は大変だったのではないでしょうか。
「そうですね。打たれれば痛いし、蹴られれば涙が出てくる、そういった体の反応を、表情で表現するということしかできませんから。石井監督には、奈緒子の心の流れを確認するということはやっていただきました」
――壇蜜さんも、過去にプライベートでSMのご経験があったと聞いていますが。
「はい。以前の恋人がそういう趣きだったので。そのときも私、Mのほうが自然だなという気持ちはありました。でもSとM、きっとどちらも持ち合わせていると思います」
――奈緒子の持っているM性と、ご自身が持っているM性がリンクするときはありましたか?
「彼女の場合は、Mを突き抜けた“探訪者”という感じですよね。奈緒子にとってSMは、トラウマの先にあるものを見たいという目的を達成するための、過程でしかないんです。彼女の救いのない人生を含めて、それはすごく悲しく感じましたね」
――撮影が1年前の9月ということで、この1年でかなり環境が激変されたんではないでしょうか。
「去年、厄年だったんです。でも、この映画で鞭に打たれたりと、痛い目にあったので、厄払いしたのかなと思います(笑)」
――多忙な日々を送ってらっしゃると思いますが、1年前、現在のブレイクは予想できましたか?
「もちろん、していませんでした。演技の経験があまりないのに、無謀にもこの作品に出演したのは、芸名をつけてもらって、3年で出しきって辞めようと思っていたからだと思います。この5月で『壇蜜』の名前で活動して3年になり、ひと区切りをつけるつもりでいたんです。けれど、映画の公開が9月になったのと、自分のまわりの状況が少し変わったというので、“延命”されている感じがあります。純粋にファンのためにがんばれるという今の状況に、感謝しています」
――多忙だと思いますが、お休みの日は何をされているんですか?
「何もしないことが多いですね。たまった家事をして、自分のまわりの環境をニュートラルにできることが、今は幸せなんでしょうね」
――壇蜜さんの趣味は何でしょうか?
「以前は、日本舞踊でした。今も、そのときに覚えた所作などが役に立っています。あと没頭できるものは、家事ですね。埃やモノがたまっていると、自分の精神状態に置き換えてしまう癖があって。部屋が乱れていると『疲れているのかも。部屋を拭えば、心身がすっきりするんじゃないかな』と思うんです。お掃除をすることで、気持ちをリセットしています。昔、葬儀社で働いているときに学んだことで、無意識に実践しているのかもしれません」
――特技は?
「特技というほどではないですが、ちょっとできるのは、お裁縫でしょうか。洋服はさすがに作れませんが、繕いものは得意です。ティッシュペーパーのケースなんかを、ミシンで作っています。いずれ特技と呼べるようにしたいですね」
――現在は、職業『エッチなお姉さん』ということになっていますが、今後、女優業も力を入れていかれるんでしょうか?
「それはないと思います(笑)。盛り上げることと、手伝うことしかできませんから。呼んでいただけるうちは、ファンやスタッフの方のためにも、自分としてはニュートラルでいたいと思っています。あれがしたい、これがしたいと、みだりに欲求があると、大げさですが、まわりにも影響を与えてしまうので」
――謙虚といいますか……。
「いえ、それしか私はできない。足元を見ていないと転んでしまいますから」
――そういったお考えは以前からなんですか?
「『人は置かれたところでしか咲けない』と、学生のころ、教訓のように言われていたので。当時は、そんな控えめな人生はイヤだと考えていたんですが、30歳を過ぎてようやくどういう意味なのか気づくことができました。自分の欲望に釘を刺すための言葉だったんだ、と。それで今は、この言葉にすごく助けられています」
――職業『壇蜜』という感じですよね。
「そうだといいんですが」
――最後に、作品のPRをお願いします。
「いちばん見てほしいのは、17歳のころの奈緒子を演じた間宮夕貴さん。彼女がSMの世界に身を投じた奈緒子を演じきったところを、しっかり見届けてほしいです。私だけでなく、2人で奈緒子を演じたというのを、わかっていただけたら、本当にうれしいです」