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『直人と倉持の会』シリーズ第1弾『夜更かしの女たち』が、下北沢・本多劇場にて12月13日(金)~29日(日)上演。
竹中直人が、劇作家で演出家の倉持裕(劇団ペンギンプルペイルパイルズ主宰)とコンビを組み、新たな舞台シリーズを始動させる。その名も『直人と倉持の会』。

今回、女性自身では、同シリーズ第1弾『夜更かしの女たち』に出演する女性キャストの一人、安藤玉恵をインタビュー。
彼女は、連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK)で観光協会の〝栗原ちゃん〝を演じ、ブレイクした演技派女優だ。

彼女が演じる寿美は、竹中扮する教師の教え子のひとり。15歳でシングルマザーになり、地域の人たちに助けられながら一人息子を育てた不良娘だ。

あんどう・たまえ☆

76年生まれ、東京都出身。早稲田大学在学中に演劇を始め、卒業後の04年から3年間、劇団『ポツドール』に在籍。看板女優として活
躍。退団後、映画『松ヶ根乱射事件』(07年)、『ぐるりのこと。』(08年)などの演技で注目を集める。映画『夢売るふたり』(12年)で第27回高崎
映画祭最優秀助演女優賞を受賞。13年はNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』に出演した。

舞台『夜更かしの女たち』

作・演出/倉持裕 企画/竹中直人 

東京公演/12月13日(金)~29日(日)、下北沢 本多劇場
大阪公演/2014年1月12(日)、サンケイホールブリーゼ
名古屋公演/2014年1月15日(水)、日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
高松公演/2014年1月17日(金)、アルファあなぶきホール・小ホール
高知公演/2014年1月18日(土)、高新RKCホール
長崎公演/2014年1月23日(木)、とぎつカナリーホール
福岡公演/2014年1月25日(土)~26日(日)、キャナルシティ劇場

 

-今回、安藤さんは、浜野謙太さんが演じる栗崎の母親・寿美を演じるんですよね? 最初、台本を読んだとき、「えっ?」と驚きました。
「中学3年生で子どもを生んだ設定なんですよ(笑)」。

-倉持裕さんの作品は今回が初めてですか?
「初めてです。もちろん学生の頃から知っていましたけど、出演するのは初めてです。今回の作品は、はミステリーで、同じ時刻に起こった2つのドラマを、停車する車両の裏と表を舞台に描く、という手法で見せます。その発想が面白いと思いました。1幕が終わり、2幕は当然、1幕の話の続きだと思うでしょう? でも、そうじゃないんです。1幕は謎だらけで終わりますから、お客さんもそれに気づいたときはハッとなるんじゃないかと思います。あとは、私たちがどう頑張って見せられるか、プレッシャーを感じます」

-竹中さんとは以前にも共演されたことがあるんですか?
image「昨年、ドラマ『都市伝説の女』(テレビ朝日系)で初めてお会いしました。丹内班という竹中さんのチームの一人だったんです。撮影が終わった後、竹中さんが飲みに連れて行ってくださって。『来年、舞台をやるから、ぜひ、一緒にやろうよ』と竹中さんがおっしゃってくださったんです。そのとき、すでに作・演出は倉持さんと決まっていて面白そうだなと思っていました」

-今回、『直人と倉持の会』ですものね、竹中さん、倉持さんに惚れ込んでいるそうですね?
「そうですね。『ヴィラ・グランデ青山』で倉持さんとご一緒されたそうです。竹中さんは、倉持さんにゾッコンなんです。お酒を飲むと、『倉持さん、好きだ~』って必ずおっしゃってますから(笑)。今回の作品は、竹中さんが、女の人がたくさん出るお芝居を倉持さんが書いたら面白いんじゃないかという提案されて、今回の企画になったそうです」

-安藤さんは、寿美役をどんなふうに演じたいと思っているのでしょうか?
「寿美は元ヤンで、15歳で子どもを生んだ。水商売で生計を立てていて、地域のみんなに子どもを育ててもらったという設定です。ほかの女性たちに比べて、私の言葉使いがかなり悪いので、そういう点ではやりやすいというか、私、昔から、ヤンキーの役が多いんです。劇団『ポツドール』のときもそうでした。現役のヤンキーであったり、元ヤンキーであったり。今回は、とうとうここまで来たか……という感じです(笑)」

-ヤンキーをやるコツとかはあるんですか?
「いや……全然(笑)。私は、ふつうの中高生だったので、当時を思い出して演じるというのはまったくないんです。昔、初めてヤンキーをやるとき、夜中のファミレスに行って、ヤンキーの会話を聞きたりしました。想像だけだと面白くなってしまうかもと思ったので。寿美は、ダブって、ダブって、23歳で卒業しました。現在は、37歳で、ほぼ実年齢の役。一人息子と15歳しか離れてないんですが、溺愛していて。息子が可愛くてしょうがないという寿美の気持ちがよくわかります。お互い子離れ、親れできていないんですよね」

-好きなシーンは?
「舞台の後半部分ですね。息子とのシーンで、けっこう泣かせるシーンがあるんです。残念ながら、実はそれもオチが付いていて、結局、笑い飛ばすような感じになります。風吹さん扮する小説家のアヤコが、寿美を褒める場面があって、そこも、すごくジーンときます。私が勝手に感動しているだけかもしれないですけど(笑)」

-物語は、恩師の送別会から始まりますね
「女優になった十和子が故郷に帰ってくる。すると、たまたま同窓会が行われていた。席上、高校時代に自殺した男の子の話が持ち上がり、彼が死んだ真相がわかるのか、わからないのか……。見ている人たちは、女性たちの嫉妬や思惑、学生時代の関係性が、セリフの端々から感じられると思います」

-女性たちの心理戦ではないですけど、何げない会話の中にキーワードがある?
「はい、そうですね。それから、風吹さんが推理小説家を演じていらっしゃるんですけど、彼女が、その同級生たちの会話の中に勝手に入ってくるところも面白いんです。部外者だけど小説家だから会話を聞くだけでわかってしまうことがあるんでしょうね」

-安藤さんが共感する女性キャラクターは?
「篠原さん扮するモトコかな。モトコの気持ちと馬渕さん扮するカサネの気持ちは、何となくわかります。いいなぁと思っている男性が、学校一の可愛い子と付き合っちゃったって。自分の高校時代を思い出します(笑)」

-倉持さんは男性ですけど、そのあたりの女性の微妙な心理を細かく描いていますよね。
「倉持さん、女性を観察したわけではなく、自分の想像だけで書いたそうですが、リアルすぎて恐いです。マイコちゃんが演じるマヒロと、トワコの姉妹のやりとりもすごく面白いですね」

-作品としては、見る人にどんなメッセージがあると思いますか?
「ところどころにキーワードが散りばめられていて、1回見ただけでは、わからないかもしれません。リピーター券を出したほうがいいんじゃないかな。私たちキャスト陣も、台本を通して読んだ後、『じゃあ、なぜ彼は死んだんだろう?』といろいろ話し合いました。作品をご覧になった方々が、終演後そんなお話をしていただけたらと思います。それぞれが誰かには感情移入していただけるとも思っています」

-話は変わりますが、2013年は連続ドラマ小説『あまちゃん』(NHK)でブレイクされました。ドラマ放送前と後でかなり周囲も変化したんじゃないですか?
「それは、本当にそうです。どこに行っても“あまちゃん!”“栗原ちゃん!”って言ってもらえて」

-栗原ちゃんは、安藤さんと似ている部分がありましたか?
「遠くはないと思います。ただ、夜一人で踊ったりはしませんし、飲みに行ってそのまま朝帰りはないです(笑)」

-現場の雰囲気はどんな感じでしたか?
「楽しかったです。舞台の先輩が多かったので、リハーサルから盛り上がりました。どんどんアイデアが出てきて、リハーサルの段階でほぼ作ってしまうので本番はすごくスムーズ。本読みからゲラゲラ笑いながらやっていました」

-『あまちゃん』は、安藤さんにとってどんな作品になりましたか?
image「代表作でしょうか。ほかにも、映画や舞台、宝物のような作品はいっぱいありますけど、多くの人に見ていただいたという点で、今後、すごく説明しやすいと思います(笑)。思い入れもあり、多くの人に見ていただいた、すごく幸せな作品です」

-学んだことはありましたか?
「『あまちゃん』だから、というものはないです。役者としての作業は、他の作品とあまり変わらないので。ただ、約1年近く同じメンバーで1つの作品を作るというのは、ほかでは経験できないことです。俳優同士のつながりが深くなったし、強くなった気がします。それはすごく貴重な体験でした」

-安藤さんは、ふだん役を演じていて役に入り込むタイプですか? それとも、現場で作り上げていくタイプ?
「最初に台本を読んだ感覚を大事にします。あとは現場で、相手役の人がどういうふうに台詞を言って、私がどう答えるかという感じです」

-今後、こういう役にチャレンジしたいなという役はありますか?
「自分から挑戦したい役はなくて。役をもらえるうちは、死ぬまで地道にやっていきたいです」

-もともとお芝居を始めたきっかけは?
「大学で演劇サークルに入ったのがきっかけです。入る前は、まったく女優になるなんて考えたこともなかったです。私は、もともと外交官を目指していて、上智大の外国語学部に進学したんですけど、ちょっと違うなと思ってすぐに辞めちゃいました(笑)。校風が合わないというか、『ここでいいのかな?』という気持ちになって、突然辞めました。母から『とにかく大学だけは出てください』と言われて、とりあえず、大学を出ようと思って早稲田に入り直しました。そこでクラスの男の子に誘われて、演劇倶楽部というサークルの稽古に行ったら、すごく面白かったんです」

-いつごろからプロになろうと思い始めたんですか?
「プロになろうと思ったのは、就職活動をしないと決めたときです。大学3年生のころで、みんなが就活を始めたころです。『就職しないで、アルバイトしながら演劇やろう』と。一緒にお芝居を作っていた人たちが本当に面白い人たちばかりでした」

-外交官にはもう全然未練はないですか?
「緒方貞子さんの活躍などを見ると、カッコいいなあと思います」

-先ほど、「きた役を地道にやる」とおっしゃいました。映画『松ヶ根乱射事件』ではヌードに挑戦されたり、演技賞を受賞した映画『夢売るふたり』の風俗嬢で濡れ場があったり、と安藤さんご自身とギャップのある役が多いような気がします。抵抗感はないんでしょうか?
「監督と話をして、納得してやっていますし、濡れ場のシーンがあるから、という理由で、役を断るということはないです。『夢売るふたり』は、自分自身でも納得できたので、後からついてきたものとはいえ、賞をいただけたことはすごく嬉しかったです。おっしゃるように、『これで認めてもらえた』という、自信になったのは確かです」

-今後も、ドラマ、映画、舞台と垣根なく何でも挑戦していきたいと?
「はい、いつもそう思っています(笑)!」

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