いまや社会現象といってもおかしくない、壇蜜人気。そんな彼女のブレイクするきっかけとなったのは、初主演映画『私の奴隷になりなさい』だった。過激な描写が話題になったが、最新出演映画『甘い鞭むち』はより一層、刺激的な作品になっており、再び話題を呼びそうだ。
「演じることに対して、どうアプローチしたらよいのかわからなかったので、『演技をする』という気持ちよりも、奈緒子の人生に寄り添う形で、映画に取り組みました」
作品は大石圭の同名小説を、映画『花と蛇』の石井隆監督が映画化したもの。壇蜜が演じるのは、女医とM嬢の2つの顔を持つ主人公・奈緒子。
「石井監督からは、奈緒子の心の流れを確認する、ということを教えていただきました」
奈緒子は17歳のとき、隣家の男性に拉致・監禁され、1カ月にわたり、もてあそばれ続けた。その地獄からの生還は、男を殺害することで達成された。
「奈緒子にとってSMという行為は、彼女の抱えるそうしたトラウマの、先にあるものを見たいため。目的を達成するための過程でしかないんです。M嬢というよりは、探訪者という感じですよね。彼女の救いのない人生を含め、すごく悲しく感じました」
ショッキングな内容、そして過激なSMの描写が多いが、壇蜜自身も、なんと過去にプライベートで、SMの経験があったという!
「以前の恋人が、そういう趣きのある人だったので。私は、SとM、両方の素養を持ち合わせていると思います」
作品が撮影されたのは、ちょうど1年前。しかしこの1年間で、彼女を取り巻く環境は激変した。この変化を、どう受け止めているのか?
「このような状況でいられるのも、去年、本厄のときに撮影で鞭で打たれたから。痛い思いをしたことで、厄払いができたのかなと思います(笑)。もちろん、現在の状況は、予想していませんでした」
「壇蜜」という芸名を名乗って、この5月で3年を迎えた。じつはそこで、壇蜜としてのひと区切りをつけるつもりだったとか。
「3年で出し切って、辞めようという思いがあって。だからこそ、石井監督の作品にも出演しました。でも、公開がこの時期になり、自分を取り巻く状況が少し変わりました。自分では〝延命〞されているような気がしますね」
それでは、今後は女優業に本格的に進出?
「それはないと思います(笑)。私は盛り上げることを手伝うことしかできませんし、足元を見ていないと転んでしまいますから」
自分を見失わない、徹底した謙虚さ。作品の見どころを聞くと、真っ先に挙げたのは、奈緒子の17歳時代を演じた、間宮夕貴(まみやゆき・22)の名前だった。
「いちばん見てほしいのは、間宮さんがSMの世界へ身を投じ、奈緒子を演じ切った、という部分。私と2人で奈緒子を演じた、というのをわかっていただけたら、本当にうれしいです」
人気者でありながら、決して浮き足立つことのない彼女には、こんな美学があった。
「『人は置かれたところでしか咲けない』。学生のとき、教訓のように言われました。当時は、そんな控えめな人生は嫌だと思っていたんですが、30歳を過ぎてこの意味を理解しました。今、この言葉にすごく助けられていますね」
これからも壇蜜は、壇蜜らしく咲いていく。
■プロフィール
だんみつ☆’80年12月3日生まれ、秋田県出身。29歳のとき『SPA!』(扶桑社)にてグラビアデビュー。その後、数々の雑誌でグラビアを飾る。女優としてのデビュー作『私の奴隷になりなさい』(’12年)で映画初主演。
■告知など
映画
『甘い鞭』
監督・脚本/石井隆 9月21日(土)~、丸の内TOEIほか全国ロードショー©2013「甘い鞭」製作委員会