「ハッピーエンドでもなく、何かが起きるわけでもありません。でも、僕の信じられる世界が、映画になりました」
池松壮亮が口にした「信じられる世界」。それは、「噓うそのない、リアリティのある世界」だという。
映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』は、ロックバンド「クリープハイプ」のミュージックビデオを手がけてきた松居大悟監督が、ミュージックビデオ3本に新作を加えて再編集したもの。池松は、新作部分に登場する青年、リクオを演じる。クリープハイプのフロントマン、尾崎世界観の原案をもとに製作されており、理想の生活とは縁遠い歯がゆい生活を送る、若者たちの青春が描かれている。
「’12年に僕が出演した舞台『リリオム』のテーマ曲を担当したのがクリープハイプで、演出が松居監督だったんです。そこで知り合って、結束を固めた結果、今回の映画につながったんです」
彼らとは、プライベートでも遊ぶ仲だと話す。
「しょっちゅう会ったりしています。京都や箱根に旅行も行きました。3人でいるときに話すことですか? 愚痴ばっかりです(笑)」
リクオは、不器用な性格から周囲とトラブルばかりを起こす青年だ。いつも不満げな目つきで、全身から、とがったナイフのようなオーラを出している。
「役作りって、今もどうしていいのかわからないんですけど、自分の一部を役に当てはめている気がします。これまでのどの役も、自分が投影されているのかなとは思います」
春には大学を卒業し、本格的に俳優業に打ち込める環境になった。’14年からは、いくつかの映画出演が控えている。
「たしかに、これまでのペースと比べたら多いですね。大学では映画製作について学びました。どんな形であれ、今後も映画にかかわっていけたらいいなと思います」
にぎやかな場所での取材にもかかわらず、本人は静かに、自分のペースでしっかりと話す。ときおり、無邪気な笑顔を見せながら。少年から大人へと成長していく、彼の姿を見られる作品でもある。
いけまつ・そうすけ
’90年7月9日生まれ、福岡県出身。
10歳のとき、ミュージカル『ライオンキング』に出演し芸能界デビュー。
『ラストサムライ』(’03年)で映画に初出演。
おもな出演作に、映画『半分の月がのぼる空』(’10年)、『横道世之介』(’13年)などがある。’14年には映画『愛の渦』などに出演する。
映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』
監督・脚本/松居大悟 ユーロスペー
スにてレイトショー他全国順次公開中
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