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又吉直樹が芸人初の受賞で大いに沸いた’15年上半期の芥川賞。同時受賞した若き作家は聖飢魔IIのデーモン閣下風メークで受賞の報告を待っていた一風変わり者。隔週連載《中山秀征の語り合いたい人》。今回は『スクラップ・アンド・ビルド』で受賞した羽田圭介(30)の人となりを掘り下げる。

 

中山「羽田さんは大学を卒業してから、1度就職されているんですよね?」

 

羽田「1年半だけ会社員生活をしていました。いきなり専業作家になるほうが現実的に難しいと思ったんです。親や親戚などが反対するだろうし、説明するもの面倒くさかったので、とりあえず就職してしまえば、そういうゴタゴタを回避できるなと」

 

中山「なるほど。日常の平穏のために」

 

羽田「小説家として生きていこうと思っているのに、小説は書かないし、本は1年に2冊くらいしか読まなかったし、ひどいものでした。仕事はそれなりに充実していたので、入社してから数カ月は『このままだとまずいな』と危機感を持っていたのですが、お世話になっている上司に辞めるって言いづらくて。気がついたら1年半もたってしまったんです」

 

中山「会社が嫌で、つらくて辞めたわけではないんですね」

 

羽田「軽い気持ちで自ら背水の陣を敷いたんです(笑)。『会社辞めたら、バリバリ書いちゃおうかな―』と思っていたのですが、専業の小説家になったら、それはそれでつらいものがあったんですけど」

 

中山「会社辞めるとき、ご両親の反応は?」

 

羽田「父は『まぁ頑張れ』と応援してくれました。やはり女の人って現実的で冷静ですよね。母のいちばんの心配は、会社員でなくなった息子が結婚できなくなるということ。『誰もお嫁さんに来てくれなくなるよ』とは言っていましたね。結婚して、家庭を持ち、子供を産み育てるという人生モデルを歩んできた母にとって、その道から外れるリスクを息子が背負うのは嫌だったみたいです」

 

中山「『せっかく就職したのに』と思うのも、わかりますけどね〜」

 

羽田「芥川賞をとっても、根本的なところは変わっていなくて、母は僕が今後作家としてやっていける可能性が高くなったことより、これで小説家以外の仕事に就きやすくなったことに喜んでいる節がありますね。『大学の講師になら、なれるかもしれない』と安心したようです。最高の名刺が得られたって感じなんです」

 

中山「これで何があっても大丈夫だって」

 

羽田「父も応援してくれているようですが、僕の作品名を間違うんですよ。たいして読んでいるわけではないみたいですし。芥川賞ってめでたいのか何なのか、わかんなくなりますね(笑)」

 

中山「そこは浮かれないご家族でいいですね」

 

羽田「いや、まぁ浮足立ってますけどね(笑)」