「(石原裕次郎さんに)『役者をやる気はないのか』と言われて『ありません』と(笑)。でも、『冷やかしでいいなら1本やりますよ』と伝えたわけ。『冷やかしで1本』と言ったら1話だけで終わりだと思うでしょ。それが、1話から最終回のことで。そこから7年間休みがなかった(笑)」
そう語るのは、隔週連載『中山秀征の語り合いたい人』第66回のゲスト・俳優の神田正輝さん(65)。スキーやダイビングなどの趣味を持つアクティブな神田さん。山小屋のおやじになりたかったという青年が、いつしか“石原軍団”の名俳優に。神田さんとは28年来の仲で、石原プロモーションにもゆかりのある中山がお話を聞きました。
中山「『冷やかしで1本』がスタートとは思えない活躍でした。その後、意識は変わっていったんですか」
神田「一度だけ、撮影のある日に海に行っちゃった。クビになったらラッキーって思ってた時期だったから。でも、そのあと撮影所に行ったら、全員が待っているんです。石原さんには『もう二度とするなよ』と言われて。石原さんだけでなくスタッフに対しても、まずいことしたなと思って、それから毎日ちゃんと時間どおりに現場へ行って、台本もちゃんと読むようになりました」
中山「役者として目覚めていくんですね」
神田「芝居が好きというより、僕がずっと会社にいたのは撮影部や照明部のスタッフがみんなよかったから。会社との心の距離が離れていたら、とっくに辞めていただろうね。誰が偉いかとかは関係ない、本当の家族のような存在。また、石原さんは僕の父と同じような話し方をする人だったから」
中山「父親同然でもあったんですね。そんな石原さんは、神田さんの(松田聖子との)ご結婚についてなんと言われたんですか」
神田「あいさつしに行ったら、『お前ら結婚しろ』と突然言われて。『いいんだよ、成城の裏でチョンチョンとやればいいんだから』って、僕らが何も言わないうちに進んでいって、6カ月したらドッカーンだよね。何が裏山でチョンチョンだって(笑)」
中山「“聖輝の結婚式”でしたよ」
神田「それがね、石原さんたちと飲んでいて部屋に帰ってきたのは結婚式当日の朝3時半。シャワー浴びて、そのまま教会へ。準備して式を挙げて披露宴をして、その日1日、成田に行くまで何も食べられなかったの。『記念写真撮らせて』と言っても、当時の専務が『いいんだよそんなもん、時間がないんだ!』というくらい時間がなくて。おかしかったよね、テレビ見ながら誰のことやってんだろうなって思ったよ(笑)」