「これまでと全然違う役をやれるのは楽しい。30代は舞台を中心にやってきて、それを見てくれていた人が『こういう役をやらそうと思はるのか』ということが、楽しめるようになってきました」
そう語るのは、NHK朝ドラ『あさが来た』の大番頭・雁助役で話題になり、その後、ドラマ『HOPE〜期待ゼロの新入社員〜』(フジテレビ系・日曜21時)では“いい人”な脇役で味のある演技を見せている山内圭哉(44)。じつは子役からキャリアをスタートさせ、映画『瀬戸内少年野球団』では故・夏目雅子さんと共演している。
「台風で撮影が休みになり、僕らが男湯に入っていたら、夏目さんが女湯に入っていたんです。『一緒に入ってもいいですか』と聞いたら『子供だったらいいよ』と言ってくれて。すごく恥ずかしかったですね(笑)」
しかし、思春期を迎えたころ「恥ずかしなって、もう嫌や」と役者業から距離を置いた。転機は小説家でもあり劇作家でもあった故・中島らもさんとの出会いだった。
「知り合いにすすめられ、らもさんの劇団に入ったけどやりたいことがわからなかった。それを言ったら『21かそこらで自分のやりたいことなんて絶対わからへん。30ぐらいまで好きなことしい。好きなことを俺がさしてやるから義務で芝居だけには出とけ』と。当時はぴんと来てなかったけど、世の中恨んでいるような若いコに、そんな捨てたもんちゃうでぇと、自分にわかりやすく伝えてくれたと思うんです。あんときあの言葉を言われてなかったら、今ごろ俺はどうなってたんやろって」
その後は、その独特な風貌を生かし、個性派俳優として活躍。プライベートでは年下の奥さんと15歳の息子の3人家族だ。
「向こうが18歳で、僕が21歳ぐらいで知り合ったから付き合いは20年以上ですね。息子とは友達みたいな関係で、あまりお父さんっぽくないかも。自分も勉強をしてこなかったから、あれこれ言えないし。音楽にも役者にも興味がないみたいです」
最近ではドラマの出演が増え、街で声をかけられることも増えたと言うが、本人はマイペースをつらぬいている。
「あんまりええ人や思われるのも嫌やし。今後の夢?なんにもないです。なんにもない(笑)。適当に休めたらええなとか、大衆酒場で飲めるくらいの稼ぎがあればええなぐらいで」