芸能スキャンダル、停滞する経済、横暴な政治……。一年を表す漢字は「金」だったものの、’16年の日本は、明るいニュースばかりではなかった。そんな日本を叱咤激励するのは、寄る年波をものともしない“最強のご長寿”たちだ。80歳、90歳を超えても“バリキャリ”道を突き進む彼女たちの、身をもって経験したからこその主張とは−−。
「今の日本に元気がないのは皆が今の日本の状況に悲観的になっているからといわれるけど、実はそれは間違いだと思います。だって周囲を見渡すと、まだまだ日本の治安はいいし、安心や安全は意識しなくてもいいくらいに確保されているでしょう。それに餓死者が出るような状況でもない。正すべきは、もっと別のところにあるんです」
こう語るのは、’16年11月に『82歳。明日は今日より幸せ』(幻冬舎)を出版した金美齢さん(82)。白髪のショートカットがトレードマークの金さんは台湾生まれ。’09年に日本国籍を取得し、国内からだけでなく外からの鋭い視点による辛口の論評が人気だ。
「インターネットやスマートフォンに費やす時間が、どんどん増えていますね。電車に乗ると前の座席に座っている人のほとんどが車内の様子や車窓の風景には目もくれず、スマホの中にある世界に没頭している姿を見かけます。これは大問題といえます。もっといろんなことに関心をもって、いろんな人に会わなきゃ。昔は『書を捨てよ、町へ出よう』なんて言いましたけど、いまなら『パソコンやスマホを捨てよ、町へ出よう』といったところかしら」
’16年11月に行われたアメリカ大統領選。トランプ勝利を予想していたという金さん。その理由は、彼も金さんと同じように「本音」を語ってきたからだと語る。
「私は会社勤めでも政治家でもないので、人の顔をうかがう必要はありません。自分の発言で叩かれることもあるけれど、『だから何?』って思うようにしています。そのぶん、本音を言うために、自立していることが不可欠なんです」
都内の大きな公園を見下ろすマンションで、一人暮らしを続けている金さん。金さんが大事にしているのは“自立”することだという。
「自立していなければ、本音を言えないだけでなく、他者に対する配慮もできないんです。外国で私みたいな年寄りが大きな荷物を持っていても、日本の男性が声をかけてくることはまずない。これは、日本の男性は母親に甘やかされて育てられていて、自立できていないからでしょう。自立するためには、ふだんから何事にも関心をもって考えたり、幅広く教養を身につけていくしかないわね」
そのうえで大切になるのは、やはり人とのつながりをしっかり築くことに限ると金さんは話している。