「お客さんにはキツネにつままれたみたいな不思議な気持ちを味わってもらいたい。魔法にかかったみたいに、ね」
そう話すのは、ティム・バートン監督の名作ファンタジー映画をミュージカル化した『ビッグ・フィッシュ』(2月7〜28日・東京「日生劇場」にて)で、父親エドワードを演じる川平慈英(54)。エドワードは自らの体験談を現実にはありえないほど大げさに語り、聴く人を魅了するのが得意。その息子ウィル(浦井健治)は子どものころこそ父の奇想天外な冒険話が大好きだったが、大人になるにしたがって作り話に聞こえてきて……。
「僕にはエドワードにそっくりな叔父がいて、戦時中の手柄話が大ボラなの(笑)。でもゴキゲンに生きてるから、なんだか許せちゃう。今日は何の話だろう、とワクワクしたものですよ」
『ビッグ・フィッシュ』は父と息子の確執から和解への物語。倒れた父が、病床でも相変わらず大ボラを吹いていることをきっかけに、息子は父親の現実を見つけだす。そして、どんでん返しが。親子は切っても切れない絆で結ばれていることを感じさせる。
「尊敬する人を聞かれると、いつも『野口英世!』と答えていました。『父親』なんて照れくさくて口が裂けても言えなかった。でも今は堂々と言える。いやぁ、大した存在ですよ、父親って」
そう言って目を細める川平は父親との思い出をこう語った。
「少年時代は多摩川の河原でサッカーの早朝練習をしてから登校していました。夢中になると、つい授業に遅刻しちゃって。ある日、あまりに遅刻が多くて、学校から連絡が行って親にバレちゃった。父にビンタされて、びっくりしたぁ。そういえば、3人兄弟のうち僕だけ山登りに連れてってもらったことがあったなぁ。兄貴たち(キャスターのジョン・カビラ氏と実業家の川平謙慈氏)ばかりをかまって、末っ子の僕に不公平だと思ったのかも。父との懐かしい思い出ですね!」